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更新日:2012-06-21 タイトル: 百合の伝説/シモンとヴァリエ 原 題: Lilies 製 作 年: 1996 製 作 国: カナダ ジャンル: ドラマ/ロマンス レ ス: ☆おすすめ!やおい映画☆ http //www2.bbspink.com/801/kako/979/979530199.html 21 名前: 風と木の名無しさん 百合の伝説、も良いですよ。 186 名前: 風と木の名無しさん 「百合の伝説」っていう映画。フランス映画デス。 「百合」って聞くとレズを想像しがちだけど綺麗な美青年 2人がからむシーン(本番はナシ)があったり。 ていうか、監督さんがホモだって聞きました(笑) 一番のおすすめシーンは両腕をあげてしばって耳なめて るところ。耳攻め萌えvv 187 名前: 風と木の名無しさん 「百合の伝説」 実はストーリーは、どうでもよろしい。 おもしろいのは、女性も含めてすべて男性が演じ、 画面にはしばしば男と男のせっぷんが繰り返し、 おおっぴらに登場するところだ。 209 名前: 風と木の名無しさん 今日の深夜2時からBS2で「百合の伝説」放送 509 名前: 風と木の名無しさん ゆりの伝説・シモンとヴァリエ 見てーん ▲PAGETOP 今日: - 昨日: - 合計: -
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前ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~ パンがなければ死神定食を食べれば良いじゃないbyルイズ そんなアホなセリフは誰が言った言葉であろう? どうやら私が言ったことになっているそうだ。 モチロン私はそんなコトいった覚えはない。似たようなことをしたような気はする。 おそらくは色々なものの裏工作にも原因があるだろう、『にも』に注意だ、とかグランパに言われた。 保守的な者はハルケギニアの文明レベルをぶっとばしてるBALLSを良くは思わないだろう。 それと、最近何気に大手柄を立てているヴァリエールを妬む者も多いだろう、とのこと。 そもそもキミ自身も悪いのだから自重したまえ。 少なくとも死神定食を出すことを前提に調理機械を送りつけるのはマズイだろう。死神定食なだけに。 私に粗末な食事を与えるしつけを失敗した事のうっぷんを、食うのに困っている人たちで晴らすんじゃありません。 怒られた。さすがは幼稚園に勤めていただけのことはある。 ん?今、私が怒られているのはそんなレベルでの話なのか? アルビオンの食糧事情を引っ掻き回した代償として、今年度のゴールデンラズベリー流行語大賞に選ばれるそうだ。 たぶん、このセリフはハルケギニア歴史に残るだろうな、とかグランパ言っちゃってるよおい。 そもそもすでに60億を超えてしまったBALLSを駆逐することは出来ないだろうから、最低でもBALLSを召喚してしまった者として君の名前は残るだろう。残っちゃうだろう。 マジ?億とかイッちゃってるの!?人知類よりも数多くね!? 次の日 ギーシュがルイズのゴールデンラズベリー流行語大賞受賞記念パーティーを開きやがった。空気嫁。 共犯はキュルケとタバサとマリコヌル。 ギーシュは無駄に仕切ってる。指揮技能99はもっと有効な事に使うべきだろうと思う。 モンモランシーがまだツンケンと当たってくる。だから何もないってば。 コルベール先生とシュヴルーズ先生は素直に喜んでくれた。素直すぎだ。私は穴があったら入りたい気分なのです。 出された料理はもちろん火中の死神定食。 匂いをかいだだけで、貴族たちの悲鳴が響いた。 使い魔たちはその前にこらたまらんと話しながら逃げていった。ああ、我が母校にも韻獣みたくしゃべれる奴らが増えてきたわね。 それにしても無駄に手が込んでいる嫌がらせだ。 食堂でなく、屋外パーティーの形をとったのはそのためだったのか。においが食堂にこもると困るからね。 当然ですが、ウケをとるために一口だけ食べてみたマリコヌルが卒倒したのを見て、ほとんどの貴族が遠巻きに眺めてみるだけでした。 会の当事者である私は熱心に奨められる。 ええい!貴族の散りざま見せてあげるわ!! なんとか耐え切った。伊達に爆発訓練で耐久力を上げてはいない。 タバサだけが死神定食を普通に食べてた。鉄の胃袋を持っておられるのを確認。 噂の死神定食を食ってみたくて荷担したのですか。アンタは。 お味は、なかなか、でも、はしばみ草には劣る、だそうである。 はしばみ草をかけて食うと風味が増すそうである。 夏期休業(里帰り) 夏休みなので、実家のヴァリエール家に里帰りすることになった。 エレオノール姉さま自ら学園に来て、私を実家に連れて行くとのたまわったのだ。 私もちい姉さまの顔を見たかったこともあって了承した。実家にも通信機を着ければ頻繁にちい姉さまとお話が出来るだろう。 と、いうわけで私たちは実家に出発した。 ヴァリエール壱号に乗って。 私とグランパだけでも飛ばすことぐらいは出来るのだ。戦闘には不安が付きまとうが。 おでれーたは水測席に安置した。剣知類なのに意外と耳がいいようだ。 家が国境を挟んで隣なので、里帰りするのに一緒に乗せて言ってほしいとキュルケがついてきた。おまけにタバサもついてきた。 たしかに片道3日が半日ですむのはいいわよね。 ヴァリエール壱号には使い魔も楽々入れるぐらいでかい入り口があった。RB用だそうだ。RBってなに? キュルケは物珍しそうにそこら中いじっていた。何故か残っていた甲板風呂にも入りに行っていた。 タバサは乗ってすぐに艦内の何処かへ行った。たぶん1階の書庫あたりに篭るつもりだろう。 使い魔たちはぶらぶらと縄張り探検。マーキングするんじゃないわよ。しないよってそのまま返された。サラマンダー知類はツッコミ体質のようだ。 エレオノール姉さまはツェルプストーと一緒とは……とぶつぶつ言っていたが、船に乗ると物珍しそうに艦内を歩き回っていた。さすがは私の姉だ順応性バツグンだ。 あ、姉さま飛行長席は危険だから座らないようにね。 経済巡航で5時間で実家に凱旋すると、さすがに騒ぎになっていた。 駐船場ないから止めて置けないわよ~~、とのこと。大丈夫、BALLS乗せて浮かしとけばキップは切られないから。 ヴァリエール壱号は風石で浮いてるわけでないので、いつまでも平然と浮き続けていられる。 燃料はBALLSが何とかしてくれてる謎動力だ。何とかなるだろう。 やっぱり実家にもBALLSたちはいた。そこら中動き回ってる。 あんたたち私が帰ったんだから、ズラッと並んでお辞儀をして歓迎するぐらいの芸は見せなさいよ。勝手気ままな奴らだ。 せっかくだからと、キュルケとタバサも歓待されていた。 道中でエレオノール姉さまからBALLS排斥論の詳しいことを聞いた。 他の貴族の家では、使用人の仕事がなくなってしまうので追い出すところもあるらしい。 いわゆる、機械がオラたちの仕事を奪うだぁ~~、という理由らしい。 職人は、便利になるのは良いが、職責を犯されるのは良い気持ちはしないそうだ。 また、得体の知れないものに自分たちの全てを託すという不安もあるとのことだ。 アカデミーとしては珍しいものをばしばし作ってくれるBALLSにはおおむね好意的らしい。 今の姉さまの研究課題はブリリアント梅鉢の育成方法だそうだ。 そんなわけで、賛否両論のBALLSだが、我がヴァリエール家では娘の使い魔の分身なので、追い出すわけにはいかなかったそうである。 つまりは心情的には追い出したいという否定派らしい。古い格式ある貴族だしね。 ただ、使用人の仕事をとらない、あたりさわりのない仕事をさせているらしい。 ちい姉さまはショッキングピンクのBALLSをペットに加えてかわいがっていた。その組み合わせはヤバイ。 ちい姉さまは、前に合った時よりは元気そうに見えた。 BALLSが色々としてくれてるらしい。 やはり順応してる。たぶんわたしよりも順応性たかいだろう。得体の知れない動物好きだし。 グランパとタバサがちい姉さまをくわえて固まって話している。 なんでも、ちい姉さまの病気が治せるらしい。 ちい姉さまの身体を元にして作った組織で、ダメになってる組織をダメじゃない組織と交換するんだとか くろーん培養という技術らしい。図解で説明されたが、要するに接ぎ木のようなものらしい。 アカデミーに勤めるエレオノール姉さまは、なかなかに有効な手だと言っていた。 普通他人の身体を移植すると拒絶反応が起こるが、本人の身体を育てて作ったものと取り替えるなら害は少ないだろうとのこと。 ただ、手術を実行するにはもう少し術者の医療の技能が育つのを待つ必要があるそうだ。 え?術者ってタバサなの?メイジなのに医者になるとか言ってる。どったのよアンタ。 元気になったらトリステイン魔法学園で学生生活したいと言っていた。 ちい姉さまに先輩と呼ばれるのは照れくさいだろうな。 次の日 お父様が会議から帰ってこられた。 せっかくなので、ヴァリエール壱号の甲板にお招きしてお茶会を開くことにする。 キュルケとタバサもおまけで一緒だ。 甲板には何故か甲板風呂が残ったままだった。普通のトリステイン軍艦に似た船の上に、何故かある立派なお風呂は違和感バリバリ。 気持ちよさそうに入っていたので、BALLSが気を使ってまた設置したようだ。気が利くんだか利かないんだか。 お父様はなんかシブイ顔でぷりぷり怒っておられる。先日の戦場乱入の件であろうか。 軍のお偉方には散々嫌味を言われたそうである。 あれだけの戦力があれば我がトリステイン艦隊も壊滅しなかった。いえ、実は壊滅してから必死こいて作ったんです。一晩もかかりました。 お父様さらにシブイ顔。なんで? シブイ顔の理由を更に聞かせてくれた。 なんでもヴァリエール家への縁談申し込み―――特に私への―――が急に増えたらしい。 いや、私婚約者いるから困ります。 どうやら、城壁を作ったり船を作ったり山を作ったりと、戦場や社会を引っ掻き回しすぎたので、 BALLSの有効性に気づいている貴族が増えてきてしまったらしい。 その並みいる貴族の中にはグラモン元帥の息子の名前もあった。それってギーシュの父親の息子だったわね。 へ?二人旅?あばんちゅーる?責任?お風呂?なんだか大きなことをやり遂げたやつれた顔で帰ってきた男? いやいやいやいやなんなんですかそれは? 貴族の噂話というのは恐ろしい………。 たぶんギーシュのやつれ顔は訓練のし過ぎと死神定食の食いすぎによるものだろう。 大きなやり遂げたこととはウェールズ様や姫様からお褒めの言葉を頂いたからだろう。王子が復権できれば相当な勲章がもらえるだろうしね。 とりあえず貴族の誇りを汚されぬため、お父様お母様の誤解を解いた。 ギーシュなんかはちょっとお断りだ。数時間単位でネタのレベルで気絶するのを真近で見せられては千年の恋も冷めるだろう。リアルで怖いわ。 エレオノール姉さま曰く、赤くなりながら否定してないから、マジで恋してないわね、とのこと。私をなんだと思っていやがる。 恋、か。私も恋ぐらいしてみたいな…………。 とりあえず一番親しい・・・といえる男友達がギーシュだけというのは改善したほうが良いだろう。 更に話は続いた。 ガリアの動向が怪しいらしい。 戦争準備でアルビオンとトリステインとゲルマニアの国力と経済が悪化する中、 一人戦争に口出しせず、BALLSから技術を巻き上げつつ富国強兵を目指しているらしい。 グランパ曰く、明らかに危険なオーバーテクノロジーは作らないように自重してはいるが、油断は許されないだろう、とのこと。あれで自重してたのか。 ガリアの無能王ジョゼフのフットワーカー、MZあるいはミューズという女がヤバイらしい。 その女に触れられただけで、そのBALLSからのリンクが途絶えたそうだ。 今、そのBALLSたちが何をしているかはわからないらしい。ただ操られるようにミューズの言うことを聞いているのは遠距離から確認できた。 洗脳されたBALLSたちは情報の城壁を作りあげ、今までのように敵の情報ダダ漏れということはできないらしい。 今はクロムウェルの個人秘書という形でレコン・キスタで暗躍中とのこと。 コレってやばくない? レコスタのバックにガリアがいようとは……。 無能王ジョゼフ、伝説の虚無のメイジジョゼフ、彼はゲーム感覚で今回の騒ぎを起こしている。グランパは断言した。 あのまま陰謀が進めば詰め将棋のように、アルビオンを落としトリステインを落とし、レコン・キスタを吸収合併し、ハルケギニアを統一していただろう。 だが、その楽しいが緊張感に欠けた楽勝ゲームを壊したモノがいる。 策略や謀略に対して情報戦をしかけ、裏をかかれる前に物量で押しつぶす物がいる。 虚無の復活という、自分と同等の存在、自分が敗北する可能性を作ってくれた者がいる。 ジョゼフはヌルプレイヤーからマゾプレイヤーにレベルアップしてしまったのだ。 ルイズ、キミと我々、BALLSの存在は、彼にとってのシバムラティックバランスなのだ。 お父様唖然。お母様毅然。ちい姉さまニコニコ。エレオノール姉さま卒倒。 キュルケはなるほどねーって顔してる。タバサはいつもどおり本を読……むふりして耳をすませている。 家族の楽しいお茶会が緊迫した空気に包まれました。 グランパ曰く、このガリアが裏にいるという情報はすでにウェールズ王子とマザリーニにはリークしている、と。 アン女王は不安定で発作的にどう動くか読めないし、ゲルマニアの皇帝はまだどちらに転ぶかわからないので保留しているそうだ。 ジョゼフはどう転ぼうともいずれ戦うことになった相手だ、とのこと。 最初から最後まで、家族はキミの味方だ、とのこと。 ジョゼフはゲームバランスを滅茶苦茶にして難易度を上げてくれたキミにゾッコンだ、とか止めてほしい。 なんか秘密にしてたことも色々とばらしてくれたみたいだが、虚無とか、BALLSの情報収集能力とか そもそもキュルケとタバサは虚無云々には薄々気づいていたらしい。 いくらやっても爆発しかしないってのはいい加減オカシイとおもうわよ。とのこと。 でも、伝説の虚無よりかは、100隻の船が突貫してくる方がリアルに怖いわよね。 とか、 グランパとは裏取引が成立している。 とか、 私の学友はなかなか驚かない。 その夜 BALLSたちにかき集めさせた無能王ジョゼフの情報を出させた。 無能なのは魔法の実技のみ。それでも魔法の座学の成績は私よりも下だったのか。勝ち点1。 それ以外はいたって普通の成績。つまりはあらゆる面で弟には大差をつけられていたそうだ。 そして王位を手に入れるために弟を謀殺してから、彼の道は変わってしまった。 残った王弟派を排斥するために、凄惨な権力闘争を繰り広げたらしい。 彼にとって不幸だったのは、彼を慕っていた弟をその手にかけてしまったこと。 そして、その後で虚無の素質に気づいてしまったことだ。 ジョゼフは主に机上の遊戯が得意だったそうだ。チェスとか軍人将棋とか。 私が魔法を使わずとも上達できる、乗馬が得意になったのと同じようなものだろう。 その頭の良さを生かしてか、政治家としてはかなり優秀で、どんどんとガリアの勢力を強めていっているらしい。 ただし、貴族や平民からは血も涙もないと評判は悪いらしい。 BALLSを使ったネットチェスではなんとかサイと名乗り、無敗伝説を作っているそうだ。 ああ、あのチェスの達人がガリアの王様だったとは知らなかった。 ナイトとビショップを抜いた大ハンデを付けられたのに完全敗北を喫した屈辱は今でも思い出せる。 アンパッサンやキャスリングを使われて負けるというのは印象深かった。 『余は強いだろう?次はこのように畳んでやろう』 とか舐めきった挑戦コメントされたのは、私の正体に気づかれていたから?負け点1。 ユーザーIDが00000000番なんてのは、製作者に一番近いキミの特権だからね、とのこと。 バレバレじゃないの。 ちょっとだけ、グランパには空き部屋に泊まってもらって、一人でベッドに寝っころがって考える。 私には、彼の歪み、妬み、嫉みが理解できた。 魔法の使えないメイジ。家柄だけがすぐれているメイジ。 優秀な兄弟。それでも自分を愛してくれる兄弟。 彼への風当たりは私よりも強かったのだろう。王族であるが故に。 何故こうなったのだろう、 たぶん、私にとってのグランパのような、味方がいなかったのがよくなかったことなのだろう。 少なくとも、無能王とは呼べない。それは私がゼロと呼ばれていたのと同じ悲しいことだからだ。 気をつけろよ、私も一歩間違えれば彼のようになっていたかもしれないのだ。 会議開始 夏休みを利用して、ついに戦争準備のための会議が始まった。 私とグランパも呼ばれている。 会議会場ではトリステイン軍のお偉方が勢ぞろいしていた。げ、お父様もいる。 とりあえずはトリステインだけの会議で、後日同盟国のものの到着を待って本格的な軍議開始らしい。 私は姫様にもったいぶった口ぶりで、BALLSのご主人様という紹介をされた。 あれ?虚無のメイジという紹介ぢゃなかったの? 飲む携帯に通信が入る。だってルイズはまだ虚無をおおっぴらに使ったことないじゃないの、とのこと。ごもっとも。 軍人たちへの反応は様々だ。納得顔の大将もいるし、苦虫を噛み潰してる中将もいる。敵意は向けないでください、怖いから。 侮られたり、ぜろぜろと馬鹿にされたりする反応はないようだ。この学園での扱いとの差はなんなんだろう? 答え:ハルケギニア1の軍船持ちだから。 なんでコイツはのほほんと落ちこぼれ学生をやっているんだろうか?普通レコン・キスタみたく革命起こすよね?とか、思われてたらしい。 いえ、革命はイヤです。クロムウェルのクグツっプリや姫様たちの気苦労を見たり聞いたりしてると、革命も簒奪も割に合わないと思いますもん。 ただの貴族、されども誇り高い貴族が一番です。 娘がイモ洗いみたいに船を大量に出すので、お父様も仕方なしに軍を出すそうだ。 むしろ出さざるを得ない。あんな裏事情を聞かされてしまっては。 たとえアルビオンをどうにかしたとしても、ガリアは私にターゲットを絞って襲ってくるだろう。 そもそも通商破壊攻撃でレコン・キスタが弱っている今こそが好機なのだ。 うまくすればトリステイン・ゲルマニア・アルビオンでガリアに対抗できる。 戦後の幕引きもうまくいくだろう。 しかし、まとまろうとした会議はしばし中断されることとなる。 女王陛下が誘拐されたのだ。 前ページ超1級歴史資料~ルイズの日記~
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召喚という拉致に遭ってから五分後、他人のサモン・サーヴァントの邪魔にならないよう脇に下がっていた統夜とキュルケ。 最初サモンとコントラクトの意味を良く分かってなかった統夜は、キュルケの情報提供をほぼ右から左に流して、ただ目の前で繰り広げられる召喚に目を輝かせたものだ。 目を皿にして観察する彼の前に出るわ出るわビックリドッキリマグマ獣……ならぬ召喚動物達。 ネズミに牛に虎にウサギに竜…………十二支もかくやといった感じの動物は勿論、飛ぶ目玉や二首の小鳥なんかも居た。 そんな動物を見た統夜は使い魔とは凄いものだなと呟いたのだが…………… 「じゃあこのマークは使い魔とやらになった証な訳か?」 「ふぁい」 統夜は額に青筋を浮かべて【ご主人様】と向かい合っていた 対するキュルケは気の抜けた返事をするのだが、彼女に統夜を馬鹿にする意図は無い。 「キスは契約を履行する為の儀式と?」 「ふん」 キュルケに統夜を馬鹿にする意図は無い。 「何となく焼ける様な痛みが有ったのはマークを刷っているからだな?」 「ほうひょ」 馬鹿にする意図はry 「ほうほう、拉致の上に奴隷契約を結ばされたと…………ちょっとおイタが過ぎるんじゃないかぁ!?」 「いはいいはいいはいぃぃ!!」 怒りの統夜と痛がるキュルケ。 統夜の鍛えられた指が、キュルケの柔らかい両頬を力いっぱい握り、断ち切らんとばかり引っ張っていた。 「うぅ………もうお嫁に行けない」 赤く見事に膨らんだキュルケの両頬。 彼女はそんな頬を押さえながらほんのりと涙目になっていて、そんな彼女の様子に統夜はほんの少し………本当に少しだけ同情した彼は一言 「ドンマイ」 と言って彼女の肩を叩いてあげた。 「貴方がやったんでしょうが…………はぁ」 キュルケは深いため息を吐き、頬から手を離すと他の生徒へ目を向けた。 涙は未だ収まってないのだが、彼女の瞳からはなにやら妙な色を湛える。 からかうような慈しむような………手の掛かる妹に対する愛情だろうか? カティアがテニアを見るような眼だ、と統夜。 その統夜が視線をたどれば見付かるのは二人の人間。 一人は禿げた教師で一人は小さな女生徒。 「次はルイズだから見逃せないわねー」 「ん、ルイズとはあの桃色か?」 「えぇ、そのピンクの娘よ。性格は胸と同じくお子ちゃまだから、貴方も絡まれないようにね」 二人の内どちらを指すのか分からずに聞いた統夜。 それを律儀に返すキュルケは、まぁ親切なのだろう。 内容はピンクの娘………ルイズを馬鹿にしているが、内に込められた物はあくまでプラス感情。 ――悪友みたいなものなんだな―― キュルケの表情と言葉から、統夜はそう解釈した。 「さぁミス・ヴァリエール、最後は貴女だ…………大丈夫、貴女なら出来ますよ。私が保証しますから」 「ミスタ・コルベール…………はい!」 知性に優しさを兼ねた瞳でそう言われたピンクのルイズは、元気の良い返事の生き見本となる返事をして虚空をカッと睨む。 「ふぅ………出来る出来るやれるやれる、諦めるな諦めなければ出来る!絶対出来る頑張れ頑張れ私超頑張れ!!」 親の仇を見る眼はそのままに独特の気合いを入れて、ルイズは深く息を吸い込み、勇気をひねり出すよう叫んだ。 「我が名は松岡……じゃなかったルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!!五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし"使い魔"を召還せよぉぉ!!!!」 切実な心の叫びが辺りを揺らし、それを聞いた者達の心に寒気と同情を植え付けた。 ドロン……… 気合いの入りすぎた召喚者に比べ発生した音はあまりにも小さく、また、聞きなれない音だったにも関わらず「あ、これは外れだ」と皆に思わせてしまった。 立ち込めるピンク色の煙。 プラトーンの様に膝を衝いて天を仰ぐルイズ。 首を振るコルベール。 あまりにもあまり過ぎてゼロと馬鹿に出来ない同級生達。 長く冷たい沈黙が満ちる中、召喚した風竜の首に凭れていた青髪の少女が小さく呟く。 「動物ですらない………」 と 確かに出てきたのは黒い四方4メイル程の大きな鉄の箱だ。生き物ではない。 青髪の呟きにいち早く反応したキュルケは、ナイス!とばかりに目を輝かせてコルベールへ言った。 「使い魔は生き物でしたわねミスタ・コルベール!?」 「え………えぇ!そうですなミス・ツェルプストー」 一瞬の後に彼女の意図を把握したコルベールは、大袈裟に宣言する。 「まぁ一度や二度の"ミス"は仕方がないですな!さぁミス・ヴァリエール、二回目をどうぞ!!」 「みすたぁぁ………」 「頑張りなさいルイズ、ほら立って」 「うぅぅキュルケ………」 三人による小芝居が続くなか、ただ一人統夜は箱に眼が釘付け。 かといって状況は止まることなく進んでいく。 「皆……頑張る!我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、使い魔を召還せよ」 ルイズの力みの抜けたさっぱりした口調に、一同の期待は大きく高鳴った。 パンパカパーン!! 小気味良く鳴り響くファンファーレ。 やはり固まる一同。 「「「…………」」」 彼らは互いに顔を見合わせると、立ち上る煙と中から見える物体に目を向けた。 洗礼された威厳が深く滲み出る、高さ190サント程の蒼きシルエット。 腰には鍔と持ち手のみの剣が括られ、銃と思われし道具が背中にあった。 その独特で、どことなく統夜の騎士服に通じるところのあるデザインに、目敏いキュルケは彼を見た。 しかし統夜はその視線に気づくでもなく、黒い鉄と蒼い鉄を交互に見やって困惑する。 「………ゴーレム?」 いつのまにか統夜の隣に立っていた青髪の少女が呟くように聞くと、統夜は首を振って答えた。 曰く 「オルゴンクラウド発生器と騎士機ラフトクランズ。大きさは違うが俺の愛機だ………」 と 「俺の?騎士機?………貴方も騎士?」 「あぁそうだ………ん?貴方もってことは君もか?」 統夜の言葉に彼女は小さく頷くと、ラフトクランズとオルゴンクラウド発生器を指差して首を傾げる。 「あれは鎧?」 「ロボ…………いや、そんなものかな」 「?」 中世レベルの文明しか持たないファンタジー世界の住民にロボットという言葉が伝わるはずもない。 言葉を濁した統夜に怪訝そうな表情を浮かべる少女の近くで、本日24回目の爆発が起きた。 シャランラーン 「もう爆音ですらないわね………」 金髪ドリルの少女が呆れを通り越して感心した様に呟くと、皆それに同意する。 「また………失敗」 すっかり煤だらけになっているルイズが、立ち込める煙を見て肩を落とす。 誰もがあーあと脱力したその時、煙がフワッと蠢いた。 その気配に気付いた統夜とコルベール、そして青髪の少女は軽く身構え、中から何が出てくるのだと警戒する。 キュキュルル? しかし姿を表したのは小さな小さな真っ白蜥蜴。 せいぜい1メイル半程の生き物だが、その白蜥蜴が何やら気品のような物を感じさせたので、ルイズは泣きながら抱き着いたのだった。 「やれやれ、一件落着かな?」 統夜がそう言って皆が頷く。 これで終われば安っぽい学園物と言えたのだろうが、そんな事が起こるはずもなく……………… 「ふむ、私は巨乳派なのだが…………まな板というのも案外乙なものだ!!」 ルイズの腕に抱かれた白蜥蜴がシレと言い放った言葉で一同に沈黙が舞い降りた…………
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【元ネタ】フランス 偽史 【CLASS】キャスター 【マスター】 【真名】オリヴァリウス 【性別】男性 【身長・体重】172cm 56kg 【属性】秩序・中庸 【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷E 魔力A 幸運B 宝具B 【クラス別スキル】 陣地作成:B 魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。 “工房”の形成が可能。 道具作成:B 魔力を帯びた器具を作成できる。 【固有スキル】 魔術:A 占星術を収めている。 また、医師であった来歴から治癒魔術に関しても優れたものを持つ。 (当時ヨーロッパでは占星術師が医師を兼ねることは珍しくなかった) 千里眼:A 視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。 透視、未来視さえも可能とする。 地獄耳:A+ ソナーの如く研ぎ澄まされた過剰なまでの聴覚。 集中することで聴覚のピントを“未来”へと合わせ、予知能力として活用できる。 【宝具】 『英雄よ、神慮に従え(プロフェシー・オブ・オリヴァリウス)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人 英雄ナポレオンの生涯を予知したとされる十二折判の書物。 対象となるサーヴァントの未来を記述することで、その運命を操作できる。 運命操作の成功率は、対象となる英霊の霊格が高いほど上昇するが、 対象の人格ないし能力からいって“あり得ない”運命(自害するなど)を導くことはできない。 この宝具は一度使用すると、他のサーヴァントに対しては使用できなくなる。 【解説】 フィリップ=ノエル・オリヴァリウス。16世紀に存在したとされる占星術師にして医師。 未来を耳で聞き眼で見るといった人物であったというオリヴァリウスは 1542年にある英雄の生涯を一冊の予言書に記し、それはオルヴァルの修道院に蔵されたという。 この予言書はフランス革命後、略奪された本の一つとしてパリ市の助役メッスの目に留まり、多くの写しが作られた。 そして予言書は、その中で語られる英雄その人の手にも渡った。 英雄の名はナポレオン。当時、戴冠式を終えたばかりのフランス皇帝である。 絶頂期にあった当時のナポレオンは自らの栄達と没落を記した予言書の内容を鼻で笑ったが、 6年後にもう一度予言書を読みなおした時は笑わなかったという。 後世、バレートやトルネ・シャヴィニー神父はオリヴァリウスの予言書をノストラダムスに関連付けた。 しかし、実際のところノストラダムスの予言に用いられる語彙との共通点はなく、 また言葉使いも文体も19世紀のものであることから、19世紀の初めに作成された贋作であると考えられている。 ……つまり上記のナポレオンが手に入れた云々の逸話も創作である。型月時空ではどうだか知らないが。
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前ページ次ページ虚無と十七属性 ここはどこだ。周りの人だかりは何だ。そして目の前で、棒を持ち、マントを着たピンクの女は誰だ。 14歳くらいに見えるピンクの少女は、仰向けに倒れている俺を、まるで牛乳を拭いた雑巾を見るような目で見て、 「アンタ誰?」と訊いてきた。 虚無と十七属性 第一節「魔王」 第一話 髪を揺らし、草木を波打たせる風の穏やかな音は、桃色の髪の毛を靡かせる今の少女の対義にあたる存在のようだった。 少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・フラン・ド・ラ・ヴァリエールは不機嫌だった。 彼女はヴァリエール公爵家の三女として生まれたにも関わらず、今まで魔法一つ成功できた事が一度もない。二年に進級 する為に絶対不可欠の存在である、使い魔召喚の儀式だけはなんとしても成功させなければならなかったが、幾度も失敗を繰り返した。 そして、今。僅かながら、その失敗の中で手応えを感じたのだ。爆発の後に影が見えたときには、それはもう、思わず歓喜の声を 上げそうになったが――初の成功を見いだしたと思ったら。 「……平民?」ただの平民だった。 「……」 召喚された男は、何が起きたか分からないといった表情のまま、うんともすんとも言わない。その表情が、ルイズの機嫌を、 さらに、頗る悪いものへと変えていった。 「アンタ、誰?」 「……」男、というより、青年は、その声に応えるわけでもなく、ただ辺りを見回した。 もの分かりの悪そうな平民を見て、ルイズは思わず苛立ちでどうにかなってしまいそうだったが、召喚したのは他でもない 自分なので、何も言えない。 「ミスタ・コルベール! やり直しをさせて下さい!」思いっきりそう叫ぶのが、唯一許された選択肢だった。 「残念だが、それはできない」ハゲは非情だった。 「なぜですか!」 「使い魔召喚は、メイジとして人生を決める神聖なもの。やり直すなど、儀式そのものに対する冒涜ですぞ? 君が好むと好まざるとに関わらず、彼は君の使い魔と決まったのです」 「ですが!」 「儀式を続けなさい。それに、彼はあなたが召喚した立派な使い魔ではありませんか」 何が立派よ、最初に「残念だが」と言ったくせに、とルイズは内心悪態をつきたくなった。 使い魔を見ると、混乱するでも、慌てるでもなく、こちらをただ、じっと見据えていた。 「ほら、これで取り乱さない使い魔なんて、多分ただ者じゃありませんよ」 「状況が全く理解できていないだけかと思いますが」 それとほぼ同時に、既に使い魔召喚の儀式を終えたギャラリー達が沸き上がった。 「は……はははははは! 腹痛い! 腹筋割れる!」 「流石、ルイズだな! みんなの期待を裏切らないや!」 「何あれ、もしかして、もしかするとただの平民?」 「ルイズにはお似合いだな!」 「ある意味、これも才能だと思うよ!」 「ゼロのルイズー!」 誰かが忌々しい、彼女の二つ名を叫んだ。彼女はもう爆発寸前だった。 いっそのこと本当に、物理的に爆発させてやろうかとも思ったが、ルイズはなんとか押しとどまった。 「儀式を続けなさい」 非情なハゲが彼女を見て、再びそう言う。ルイズは唇を噛みしめた。 穏やかな風は、やはり今の状況に似合わなかった。 ◇◆◇◆◇◆ キッと、桃色髪の少女がこちらを睨みつけた。髪の薄い男性と、ツカイマが何やら口論していたが、どうやら俺が原因らしい。 俺はさっきまで、確かポケモンセンターでボックスの整理をしていて――――それで? あれ、俺はどうしてこんな所にいるんだろう。 そういえば、何か鏡ともドーミラーとも似つかない物体が現れて、それに触れて、引き込まれて。引き込まれて? 駄目だ、頭が痛くなってきた。レポートを見返した方がいいかもしれない。とりあえず、四天王戦よりも、バトルタワーよりも、 いろいろと遙かに厄介な状況である、という事が、なんとなく、分かった。 「貴族にこんな事してもらえるなんて、平民のアンタには多分一生無いわよ。感謝しなさい」 「……」 そんなわけで、考え事というか、内心恐慌状態だった俺は、少女が屈みこんで、こちらを真っ直ぐに見つめていた事には まるで気がつかなかった。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、 我の使い魔となせ」 そして刹那、接吻を受ける事となった。 「!」 何のつもりだ、と抗議をするつもりだったが、突如として襲ってきた、胸板への尋常ではない激痛が、それを妨げた。 視界が暗転し、思わず俯せに倒れた。畜生、どこが祝福だ。 「心配しなくても、使い魔のルーンが刻まれているだけよ」 少女が無慈悲にそう言ったが、気休め程度にもならず、この痛みは尋常ではなかった。 右手で草を毟り、左手で服の中に手を突っ込み、胸を掻き毟った。体はくの字に折れ曲げる。どうにか痛みを和らげようと、 必死になったが、焼けるような痛みは悪くなる一方だった。右手が掴んだ地面は抉れ、左手で掻き毟った胸板からは血が吹き出し、 指には自分の表皮細胞とヘモグロビンがごっそりついていた。焼くような痛みは、一向に引かない。まるで血が沸騰するかのようだった。 俺は――めのまえが まっくらになった。 ◇◆◇◆◇◆ 使い魔のルーンを刻む為、といっても随分と時間が長い気がする。青年がのたうち回り初めてから30秒は経過した。 一向に戻る気配がない。 声を上げない叫びを上げている自分の使い魔を見て、流石に様子が変だという事に気がついた。 「ちょっと……アンタ、大丈夫……?」 声をかけても、何も返して来ない。青年は激痛と格闘していた。 ふと、衣服の中から、僅かに青年の左手が見えた。見間違いでなければ、夕日のよう、と形容するにはあまりに禍々しい液体が べっとりと付着し、胸からは大きすぎる光と、血が溢れていた。 「……え……」 血? 「おい、ルイズの平民、なんだかおかしくないか?」周りの生徒も、先ほどとは違うざわつきを見せた。 「コントラクト・サーヴァント、したのよね?」 「もしかして……また失敗したの? 胸は光っているけど」 「え、まだ終わらない、の?」 その時だった。 「あ゛ああああ!」苦痛に溢れた咆吼が、草原に響き渡った。 ルイズは見た。 青年の体から、何か四角い物が大量に析出しているのを。否、青年の身体が、衣服が、無数の正方形に変形していたのだ。 彼の体から溢れる血液も例外ではなく、小さな正方形へと形を変えていく。 まるで――モザイクのようだった。 「ひっ」唯一、近くでそれが確認できたルイズは、悲鳴を上げた。 それと同時に、青年は動かなくなった。 青年と示し合わせたかのように、誰も動けなかった。 「え、死んだ、の?」ギャラリーの誰かが、そう呟いた。 その声で正気を取り戻したのか、コルベールが青年に駆け寄った。 この壮絶な光景を見たというのに、彼は至極冷静に、急いで手を取り、脈をとった。 「あぁー、良かった。……彼はちゃんと、生きてます」溜息をついて、ハゲは言った。 その言葉を聞いて、ルイズはぺたんと腰を落としてしまった。 ◇◆◇◆◇◆ 「彼はちゃんと、生きてます。……!?」 教師、コルベールは息を呑んだ。 脈を測った側の手についた、あるはずのない赤い液体を確認したからだ。 「ちょっと確認したい事があるから、皆、先に教室に戻っていてくれ! 授業の残りは自習でいいぞ! なんなら使い魔と交流を深めてもいい」 教師として、生徒にこれを見せるわけにはいけなかった。 訝しげな表情を見せる生徒たちが「フライ」を唱えて去っていったのを確認してから、再び青年を見た。 疑問は尽きないが、それに少しばかり安堵して、すっかり直ってしまった青年の上半身の服を脱いで胸板を露わにした時、 コルベールは思わずぎょっとした。 掻き毟ったのが原因だろう、僅かに皮膚の内側が露わになって、その部分からは血が沸いていた。 出血多量で死ぬという事はないだろうが、この青年の痛みを想像しただけで、思わず顔を顰めてしまう。 しかしそこは、過去に魔法衛士隊として戦場を見てきたコルベール。衝撃はあまり大きなものではなかった。 彼が驚いたのは、文献も含めて嘗て見たことの無い、長い長いルーンが刻まれていたからだ。 「何だこれは……」 通常のルーンらしきものが一つと、通常の使い魔に刻まれるものとは明らかに違う、解読不能の文字が16あり、 それが2行にも連なっている。 これはルーンなのかどうかさえ疑わしい、見たことの無いルーンであった。 コルベールは規格外だらけの事象に頭を抱えていると、そのうちに、スッと2行の文字は消えていった。いよいよ訳が分からない。 悩みで、彼の頭の砂漠がさらに広がりそうだった。 人間が召喚されたというのも聞かない話だが、それ以上にこのルーンは何なのだ。 「この青年は知っているのだろうか」 後に残された三文字のルーンを、とりあえずコルベールはスケッチする事しかできなかった。 スケッチし終えると同時に、背後に僅かな気配を感じ、コルベールは慌てて振り返った。 そこには、呆然とした表情のまま腰を下ろした、この使い魔の主がいた。どうして今まで気付かなかったのだろう、 コルベールは自分を戒めた。 穏やかな風が、彼の残り少ない髪の毛を揺らした。 「ミス・ヴァリエール……。見たのか、君は」 「……は、はい」ルイズは答えた。 「いいかい、この事は絶対に口外無用だ。この使い魔の正体は、教師である私にも分かりかねるものだ。 ルーンの時は何が起こったのかさっぱり分からないが、幸いにも彼は生きている」 「はい」 「他の生徒に何を聞かれても、君はこの事を答えてはならない」 「はい」 「何か分かった事があったら、彼の主である君にも伝えよう。まだ、何も分からない状況だからね」 「はい……」 「彼は、私が医務室に運んでおこう。君は、教室に戻りなさい。いいか、絶対に喋るんじゃないぞ」 「わかりました」 ふらふらと、歩きで教室へ戻るヴァリエールを見送った後、コルベールは溜息をついた。 さてこれからどうしたものか、と。 前ページ次ページ虚無と十七属性
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脱!ゼロの二つ名…予定 爆発による煙は晴れ、視界が開けると、その中心で桃色のブロンドの少女ルイズは唖然と立ちつくしていた。 「人…間?…なの?」 ルイズは目の前に横たわる人間が召喚されたのだと気付いた。人間を召喚するなど前代未聞だが、頭にカラがある事に気付き、何かの亜人だろうかと想像する。…鳥人かな? しかし級友は優しくなかった 「オイオイ!今度は平民を召喚しちまいやがったぜm9(^д^)Pmプギャー」「流石ルイズ!俺達に出来ない事を平然とやt(ry」 「エ~?マジー?平民~? キャハハハハ」「キモーい!!平民召喚が許されるのはダメルイズだけよね~ アッハハハハ」 そんな随分と酷い中傷は、しかしルイズの耳に届かなかった。 その人間の寝顔があまりにも穏やかで起こす事を躊躇ってしまうからだ。こんな全てやり遂げた様な安らぎを未だ見た事は無い。 「ミスヴァリエール。時間が惜しい。早く契約をなさい。」 味わいある壮年コルベールが契約を促す。 正直平民と契約させるのは彼自身納得行かない。 ましてやうら若き乙女で、しかも落ちこぼれとは言えヴァリエール家の子女。もったいないと思うが、なにぶん他の生徒の前でそんなことを出せる訳もなく、努めて淡々と続きを促した。 自分の召喚したのが平民と思われている事に気付いたルイズは恥ずかしさに顔を朱に染め、契約を行う さて、お決まりの呪文と、せ、成約のキ…キキキスキス鱚帰スすすsususuあわわわ 頭の中がキスkiss鱚といっぱいになるが外には出さない様に感情を抑える。純情でも人前には示さない安いプライドがあるのだ 顔に手を触れる …!!冷たい!いや冷たいなんてもんじゃない!まるで死体だ 困惑した顔でコルベールを見る。 髭親父はすがる様な濡れた瞳にクラっときたが、我慢して続けさせた。 恐る恐る唇を合わせる。だが、その唇は暖かかった。順番に手を触れている顔も熱が通いだした。まるで唇から熱が巡りだしたかの様に 「…うぉおお!」突然男は目を醒ました。「ひゃ!」驚きルイズは尻餅を着いた。 髭親父がこっちを見ていた。 ……何を見られているか気付いて顔を真っ赤にした…スケベ親父めぇ~ スカートをキチッと直し気丈に構え「契約完了しました。ミスタコルベール」言外に非難を込めて言った。 コルベールが近付き左手に浮かんだルーンを確認する。ルイズは反対側に回ってエロ髭から距離を取る 「ふむぅ…契約は問題なく出来たね。」 微笑む髭を冷たい目で流し、自分の使い魔に向う。ルーンの痛みが引いたところでさっそくコミュニケーションを取る 「あんた誰?」名前は大事だ。あんただのお前だのそういう呼び方は嫌いだ。 使い魔は周囲の状況に戸惑いつつも落ち着いて答えた 「俺…か?俺はレオーネ・アバッキオだ。」 「レ・オーネ=アバ・キヨ?ちょっと貴族みたいな名前ね。私はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! ルイズ様か、愛を込めて ル イ ズ て呼んでもよろしくてよ?」 キマッタ!これで主導権を握ったわ!更に呼び捨てすら許す心の広さも示して見せたわ! 「…アバッキオだ。区切って読むな。」「う!うう五月蝿いわね!ちょっとした間違い位流しなさいよ!」 あれ? 「…さてそれでは帰りますかね皆さん」 コルベールが皆を先導する。 瞬く間に空に浮かび上がり去って行った。鮮やかで 悔しい 「あれは何だ?」アバッキオ…何を言ってるの?基礎的な魔法じゃないの…ひょっとして魔法見た事無い? 「ここはトリスティン魔法学院よ。魔法何てまるで珍しくないわ。」メイジの誇り高さに胸を張ってみる…色々と虚しい 「…とするとその魔法とやらで俺を助けてくれたのかあんたは?」 「あ、あんたですってぇえぇ~~!?言葉遣いが違うんじゃなくってぇえ~?」前言撤回。こいつは平民だ。ならちゃんと躾をかまさなくてはならない。噛みつくようなら罰だって与えなくてはねぇえぇ~! だが予想外の反応が返ってきた 「…ありがとよ。」「へ?」唖然とした。何でお礼言われたのかしら?やはり…何者? 「と…とりあえず学院に帰るわよ。着いて来なさい。」細かい事は部屋で聞こう と歩き出すと ドサリ とアバッキオは倒れた。 「え?ちちょっと!」何なのぉ~こいつぅ~いきなしブッ倒れるとか穏やかじゃないわ! 憤りをよそに、アバッキオはピクリともせず、ルイズは焦りだした。 「まさか凄い衰弱してるの?何なのぉ~こいつはぁ?」 これからの事を考えるとルイズも一緒に倒れてしまいたい気分になってしまったのだった to be contenued
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前ページ次ページラスボスだった使い魔 ラ・ヴァリエール家の面々は、今日も一家揃って朝食を取っていた。 「……………」「……………」「……………」「……………」「……………」 日当たりのよいバルコニーで食べていると言うのに、誰も言葉を発さず、その空気は重い。 ちなみに先日までは食事の場に使用人たちと並んでユーゼス・ゴッツォが控えていたのだが、彼はルイズとエレオノール、そしてカトレアを起こした後、『これ以上体力を使う余裕がない』という理由でダウンしたために姿を見せていなかった。 (まったく、最近の若い者はこれだから……) そんなことを考えつつ、黙々とナイフとフォークを動かすカリーヌ。 なお『肉体年齢』はともかく『実際に生きてきた年数』で言うならばカリーヌはユーゼスよりも年下であるのだが、当然カリーヌはそんなことを知る由もない。 「……………」「……………」「……………」「……………」「……………」 何にせよ、ラ・ヴァリエール家の無言の食卓は続く。 だがその食事の最中、おもむろにラ・ヴァリエール公爵が口を開いた。 「ん……あ、あー……ルイズ、少しいいかな?」 「……何でしょうか、父さま」 スッと冷めた視線を父に向けるルイズ。 公爵は末の娘からそんな目で見られたことに僅かにたじろぎつつも、探りを入れるようにして問いを投げかけた。 「……魔法学院では、どうなのかね?」 「どう……と言われましても」 ルイズが困ったような顔になる。 どうやら質問が抽象的すぎて、どう返答して良いものか分からないらしい。 「えぇと……その、アレだ。友人関係とか、誰か好きな男でも出来たり……とかな。……って、ルイズに恋人がいるわけないか! はははは!!」 自分の台詞を自分で否定するラ・ヴァリエール公爵。 ……ここ最近、書斎に篭りっぱなしだった彼は必死で『年頃の娘との接し方』や『こんな父親が嫌われる』などの本を探し、読みあさっていた。 それらの本によると『娘の態度がいきなり変わるのは、男の影響を受けた可能性が大きい』とあったのだ。 いや、まさか。 ウチの娘に限って、そんなことあるわけないじゃないか。 でもまあ、万が一ってこともあるし。 ……大丈夫だとは思うけど、一応カマをかけてみよう。どうせ空振りに終わるだろうけど。 と、そんなことを考えながら言った言葉だったのだが……。 「なっ……、べ、別に、恋人なんて……いませんわっ」 「え?」 予想外のリアクションが返って来てしまった。 「い……いるのかね、ルイズ?」 「い、いません。いないんです。全然、いないんだから」 本当にいないのなら、もっと冷静に、キッパリ断言するはずである。 「……そ、そうか……。いや、いつかはこんな日が来るのではないかと思っていたが……。ま、まあ、お前ももう年頃だしな……」 「だから違いますって!」 公爵は内心の焦りを押し止めながら、努めて冷静に聞き出しを始めた。 「そ、そそそ、それで……相手は……どこのどいつで、どんな奴なのかね? か、家名は? 身分は? 領地の広さは? 家の歴史は? 容姿は? 性格は? ……ええい!! まだるっこしい、今すぐソイツをここに連れて来い!! じっくりと品定めをしてやる!!!」 「……あなた、少し落ち着いてくださいな」 「う、うむ……」 興奮するラ・ヴァリエール公爵だったが、カリーヌにたしなめられてテンションを少し下げる。 そしてワインを一口飲み、本人的には落ち着いているつもりの口調で問いを重ねた。 「まあ……ワシとしてもだな、ルイズ。別にお前の…………こ、こいび…………『男友達』をどうこうしようという訳ではないんだよ。ただ、少し話をしてみたくなっただけなんだ」 『恋人』という言葉を使いたくないのか、やや無理矢理気味に『男友達』という単語を使う公爵。 対するルイズはそんな父の様子を見て逆に冷静になったのか、ポツリと不満気味に呟く。 「いないって言ってるのに……。それに男の人がどうこう言うんなら、順番からしてエレオノール姉さまの結婚の方が……」 「…………何ですって?」 「あ、やば……」 低く絞り出すような声を耳にして、ルイズは『しまった』という表情になる。 そして恐る恐るその声の方に顔を向けた途端、いつものつねり上げではない、口元を強引に片手で鷲掴むような掴まれ方をされた。 「もがっ!?」 「……私の前で、その縁起でもない単語を軽々しく口にしないでもらえるかしら?」 「あが、あががががが……」 ギリギリギリ、とルイズの頬にエレオノールの指がめり込んでいく。 それでも何とか口を動かし、ルイズは姉に対して謝罪した。 「ご、ごぇんなひゃひ……(訳:ご、ごめんなさい……)」 「結婚は人生の墓場、とおっしゃいな。ちびルイズ」 「け、けっきょんはじんひぇいのひゃかびゃ……(訳:け、けっこんはじんせいのはかば……)」 「よくってよ」 パッと妹の頬から手を離し、自分の席に戻るエレオノール。 ルイズは痛む両頬を撫でさすりながらやや恨めしげに長姉を見るが、その場にいる他の家族たちは今のエレオノールの行為について誰も何も言わなかった。 何故なら、これまでエレオノールに対して幾度となく縁談の話は持ち上がったのだが、その度に相手の方から断りを入れられていることを知っているからである。 だが、エレオノールももう27歳。 同い年の貴族の女性ならば、もう子供の一人や二人くらいはいても何の不思議もない年齢だ。……と言うか、カリーヌはエレオノールの年にはもうカトレアを産んでいる。 トリステインでも三本の指に入る名門ラ・ヴァリエール家としては、これはあまりよろしくない事態である。 よって、誰かがそれを指摘しなければならないのだが……。 「……あなたはそう言いますがね、エレオノール。いい加減にそろそろ身を固めるべきですよ」 「母さままで……!」 そんなことを言える者は、この場ではカリーヌくらいしかいなかった。 カリーヌはルイズに行った行為についてはスルーしつつ、エレオノールの当面の問題について言及する。 「あなたももう『年頃』どころの年齢ではないでしょうに。……先程の父さまとルイズの話ではありませんが、あなたも気になる男性の一人くらいはいないのですか?」 「……き、気になる男性、って……」 途端にエレオノールの顔が紅潮していく。 「な、何ぃ?」 「……………」 「……あら」 「む……」 そんな長女の変化を見て、家族たちは何かを察知した。 「ま、まさかエレオノール……お前も?」 「な、なな、な……何を言っているんですか、父さま。別に私は、あ、あんな男のことなんて……何とも思ってませんわ。ええ、ホントに……好きでも、何でも、ないんだから」 「『あんな男』だとぉ!!!??」 「あ」 父の叫びを聞いて、エレオノールは自分で自分の墓穴を掘ってしまったことに気付く。 (くっ……、わ、我が父ながら、何て見事な誘導尋問なのかしら……) こんなもの誘導尋問でも何でもないのだが、とにかくヴァリエール家の長女はワタワタ慌てながら弁明を行った。 「い……いえ、今のは違うんです、父さま。つい間違ったと言いますか、言葉のアヤと言いますか、口が滑ったと言いますか……えぇと、えぇと、とにかく違うんです! あ……あっちの方は分かりませんけど、私の方は何とも思ってないんですから!!」 「そ、そんな……ルイズだけでなく、エレオノールまで……」 「だから違いますって!」 顔を赤らめながらまくし立てるように言われても、全然説得力がなかった。 と、その時。 「まあまあ、父さま。姉さまもルイズも『好きな人はいない』って言っているのですから、それでいいじゃありませんか」 カトレアが柔らかな笑みを浮かべつつ、なだめるようにして父に話しかける。 三姉妹の中ではある意味で最も『恋愛』という事柄から遠い彼女の存在は、ラ・ヴァリエール公爵にとってある種の救いのようにも感じられた。 「む、むう……。しかしだな、カトレア」 ……そう感じていたのだが、直後、その『救い』のはずの次女の口からトドメを刺すような一言が放たれた。 「もっとも、私にはちゃんと好きな男の人が出来ましたけど」 カシャーン、と。 その時、公爵の手からナイフとフォークが落ちた。 「なん……だと……?」 狼狽を通り越して、呆然とするラ・ヴァリエール公爵。 しかし、これに驚いたのは彼だけではない。 「ち……ち、ちい姉さま!? ナニを言ってるの!!?」 「何って……私だって恋の一つもするわよ。いけないかしら、ルイズ?」 「いや、いけなくはないですけど……」 ニコニコと笑うカトレアに見つめられ、ルイズは思わずそれで納得しかけてしまう。 しかし、簡単に納得するわけには行かないことが一つだけあった。 その『相手の男』とは、一体誰なのか。 何せ次姉はこれまでラ・ヴァリエールの領地から一歩も外に出たことがないし、自然と男性と会話をする機会も……全くないというわけではないが、かなり限定されてくる。 しかもカトレアが惹かれたり魅力を感じたりする男となると、これは『限定される』などという言葉では生ぬるいだろう。 (『出来ました』って口振りからすると、最近に出会った人みたいだけど……) 可能性があるとすれば…………いや、それはない。 あんな何を考えてるのか分からなくて、研究以外に興味の対象が見当たらなくて、感情の起伏すらほとんど無さそうで、自分に対して一度も笑ったこともなくて、いつまで経っても他人行儀なヤツに、まさかちい姉さまが心を動かされるなんて。 そんなことはまず有り得ない、はずだ。 (それに……ちょっとやそっと一緒にいたくらいで良さが分かるほど、アイツは分かりやすいヤツじゃないんだから) …………まあ、ルイズの脳裏に浮かんだ可能性は完全に排除するとしても。 今までずっと浮いた話の一つすらなかった次姉がこういう話題を自分から持ち出してきたということは、喜ぶべきことなのだろう……と思う。少し複雑だが。 うぬぬと唸りつつルイズがそんなことを考えていると、カトレアはくるりとエレオノールの方を向いて『にこやかに』語りかける。 「エレオノール姉さまは誰も好きな人なんていないんですから、別に私が誰を好きになろうと構いませんわよね?」 「……どういう意味なのかしら、カトレア?」 「さあ、どういう意味なんでしょう?」 妙な感じに空気を張りつめさせていく長女と次女。 ちなみに、何故かカリーヌだけは眉をひそめつつも無言である。 「おお……、お……」 そして茫然自失の状態からどうにかして復帰したラ・ヴァリエール公爵は、震える声で娘に質問する。 「カ……カカ、カ、カトレア。こ、この際、お前の想い人とやらが誰なのかは問わないことにしよう……。だが……せ、せめて、馴れ初めを……い、いや、その男のどこが気に入ったと言うのだ?」 顔も声も名前も知らない『謎の男』の正体の一端でも掴もうとする、公爵のあがきであった。 だが。 「どこ、と言われましても…………一目惚れみたいなものですし」 「ひ、ひとめぼれ?」 「はい」 公爵は、その娘の言葉を聞いてフラッ……と倒れてしまった。 「ああっ、旦那さま!」 傍に控えていた執事のジェロームが、そんな公爵を介抱し始める。 「……まったく」 次々と明かされる事実に翻弄される父親、何やら牽制し合っている三姉妹。 そんな家族たちの中で、母親だけはただ一人冷静さを保っていたが……。 「……まあ、全く分からないということはないけれど……」 取りあえず今日の訓練は少しキツ目で行こう、と思うカリーヌであった。 「ぐ、ぅぅう……」 痛む身体を押して、バルコニーへと向かうユーゼス。 本当は死体のようにずっと倒れ伏していたいのだが、使い魔という立場上いつまでもダウンしているわけにもいかない。 それに主人たちが朝食をとっている最中に寝ていたとなると、あの公爵夫人に何を言われて何をされるか分かったものではない。 「……何故こんなことに……」 ここに来る前の予定では、本でも読みながらのんびりと過ごし、たまにエレオノールやルイズの相手をしながら平和な一時を満喫するはずだったのに。 一体自分が何をしたと言うのだろう。いや、色々なことをしてはきたが。 「ぬ……くっ……」 何にせよ、主人と合流する程度はしておかなくてはならない。 上手くすれば、ルイズが間を取り成して今日の訓練が中止になる可能性だって……限りなくゼロに近くはあれど、決してゼロではないのだ。 などと考えつつ、筋肉痛と打ち身に悲鳴を上げる身体を引きずるユーゼスだったが……。 「……む?」 「な、何故だ……。一体……一体、どこの誰が……。さ、三人が三人とも……同時にって、こんな……馬鹿な話が現実にあるわけが……」 「旦那さま、お気を確かに!」 ふと前を見てみると、執事に支えられながらフラフラと歩くラ・ヴァリエール公爵の姿が見えた。 「……………」 「現実……そ、そうかジェローム。きっとワシはまだ眠っている最中なのだ。きっとこの夏の陽気に当てられて嫌な夢を見ているのだな。現実のワシの身体は今、ベッドの中で寝苦しさに唸りを上げながら眠っているに違いない。ハハハ、この寝ぼすけさんめぇ」 「いや、それこそ現実から目を背けてはいけませぬ!」 ユーゼスは取りあえず一礼でもするかと姿勢をやや強引に正すが、しかし公爵も執事も自分たちのことに手一杯でユーゼスのことには全く気付いていない。 「?」 いきなり十年ほど老け込んだように見えるが、何かあったのだろうか。 (ふむ……。やはり公爵ともなれば、色々と心労や悩みごとなどがあるのだろうな……) 社会的地位や貴族としての立場などには興味が全くないのでよく分からないが、精神的にかなり追い詰められた経験ならばユーゼスにも何度かある。 絶対の自信を持っていた大気浄化弾の失敗。 独房への長期間の投獄。 そして顔や身体のほとんどを失ったこと。 ……いくら何でも公爵の悩みとやらがそこまで深刻とは思えないが、しかし精神的なダメージの辛さなど感じている本人にしか実感は出来ない。 (それを乗り越えられるかどうかも、また本人次第だな……) 無責任に『頑張れ』などとは言えないが、しかし心の中で小さく声援を送りつつ、『かつて乗り越えられなかった男』は深々と礼をしながら公爵を見送る。 「だ、だって有り得ないではないか。手塩にかけて育ててきた三人の娘に、まったく同じタイミングで男の影がチラつくなんて。今までほとんどそんな話はなかったのに……ねえ?」 「『ねえ』と言われましても、実際にそうらしいのですから仕方がないではありませんか!」 「……………」 さて。 本日のスケジュールは、午前にルイズから乗馬の手ほどきを受け、昼食はカトレアと取って、午後は日が暮れるまでカリーヌの訓練、夕食後はエレオノールと久し振りに魔法論のやり取りを行う、というタイトな物になっている。 「……因果律を調整して疲れを消すことも視野に入れておくか」 正直に言えばやりたくないが、この際仕方があるまい。 しかし、もしやこんな生活が御主人様の夏期休暇が終わるまで続くのではないだろうか。 「………………考えないようにしよう」 銀髪の男はその予想が限りなく正解に近いことに薄々と気付きつつも、今は取りあえずルイズと合流すべく、色々な痛みと戦いながら歩いていく。 別の日。 ルイズは自室にて悩んでいた。 先日明らかになった『カトレアの想い人』だとか、いつまで経っても上達しない使い魔の乗馬に関して、ではない。 いや、それらももちろん大事なことではあるのだが、そういうのとは種類の違う『大事なこと』だ。 「……………」 アルビオンに行くのか、それとも行かないのか。 いつまでも結論を先送りにすることは出来ないし、どちらにせよ早い内にハッキリとさせておいた方が良いだろう。 「う~ん……」 ルイズはまず、戦場と呼ばれる場所で自分に何が出来るのかを考えようとして……考えるまでもないことに気付いた。 自分の『虚無』をトリステイン軍の勝利のために使い、アルビオン軍を蹴散らす。 これ以外に何があると言うのだろう。 と言うか、逆に言うとそれ以外に出来ることなど何もない。 船を動かせるわけでもない。 何か作戦を立てられるわけでもない。 傷付いた兵士を癒せるわけでも……いや、もしかしたらまだ自分の知らない『虚無』の魔法の中にはそういうものもあるかも知れないが、少なくとも今の自分には使えない。 しかも、おそらくアンリエッタは『一兵士』としてではなく『強力な魔法兵器』としてルイズを使おうとしているはずだ。……もっとも、ルイズにもこれ以外の自分の使い道は思い付かないので、ある意味で仕方がないのだが。 よって、直接戦場に立つ可能性も低いと思われる。 「……兵器」 以前の……ユーゼスを召喚して色々な経験を積む前の自分ならば、それでも構わないと言ったかも知れない。 だが。 ―――「私より、ウルトラマンにでも頼んだ方が良いのではないか? 彼は地球の救世主だ。きっとこの事態を何とかしてくれるだろう」――― ―――「ハハハ! それはいい! ウルトラマンに支配されれば、地球の環境は破壊されずに済む! 自分の星すら満足に守れない、他力本願で自分勝手な地球人にはふさわしい支配者だ!」――― ―――「お前たちのように正体を隠して他文明の危機を救うのではなく、当初から絶対者として宇宙に君臨する。それが……超絶的な力を持った者の定めだ!!」――― ―――「私がどんなに汚れた大気を浄化しようとも……宇宙刑事たちが命をかけて犯罪者を捕まえようとも……。ウルトラマンの存在を知った人々が思うことは一つ……」――― ―――「……お前たちは、自分たちより弱い立場にいる者を甘やかしているだけだ。偽善者面で神を気取っているだけなのだ。お前たちは弱者の自立を遅らせている! 宇宙はお前たちの存在など必要とはしていない!!」――― あの夢の中のセリフが、思い起こされる。 ……このセリフの『ウルトラマン』という部分を『虚無』に、『チキュウ』や『ウチュウ』という部分を『トリステイン』や『ハルケギニア』に置き換えてみる。 『ウチュウケイジ』という部分は『兵士』とでも置き換えるとして。 ―――困ったことに、違和感があまりない。 自分は支配者になる気などは全くないのだが、それでも『虚無』は使いようによってはトリステインどころかハルケギニア全土を支配出来てしまうはずだ。 何せ『初歩の初歩の初歩』と書かれていたエクスプロージョンですら、艦隊を壊滅させるほどの威力を持っていた。 これがもっと強力な呪文になったら……。 「わたしの力を巡って、争いが起こるかも知れない……」 十分に有り得る話だ。 ……イザと言う時には祖国を、トリステインを守るべく戦うという覚悟はある。 これはトリステインの全ての貴族が持ち合わせている物だろう。 誰だって、祖国が蹂躙されることを良しとする訳がないのだ。 「……………」 そして、アンリエッタのために尽くしたいという気持ちは……あるにはある。 幼少の頃に遊んだ、『おともだち』。 宮廷の中で泥だらけになりながら蝶を追いかけ、一緒に侍従のラ・ポルトに叱られたこと。 クリーム菓子を取り合って、つかみ合いのケンカをしたこと。 ケンカの時は、大抵自分がアンリエッタを泣かせて勝利していたが……一度ならず、負かされたこともあったこと。 アンリエッタの寝室でドレスを奪い合ったこと。 ……思い返そうと思えば、いくらでもこうしてスラスラと思い返すことが出来る。 これらは今でも、大切な思い出だ。 そしていつの間にか誓っていた。 この身は姫様に捧げるのだ、と。 「誓った、んだけど……」 しかし、あの操られたウェールズ皇太子による誘拐事件を経て、その気持ちが薄らいだのも事実だ。 正直、アレはないと思う。 半ば強制的に連れ去られたのは、別にいい。これは仕方がない。 問題はその後だ。 『おともだち』であるはずの自分の言葉に全く耳を貸さず、正気を失っていると理解しながらもウェールズ皇太子に付き従った。 その後、明らかに『死んでもおかしくはない』はずの威力の魔法を自分たちに向かって放った。 仮にも一国の女王が、自分の国の貴族に向かって、である。 「うぅ~ん……」 そんな彼女が、自分に向かって『戦場に行け』と言っている。 相手はウェールズ皇太子の命を奪い、あまつさえその亡骸を利用してアンリエッタをかどわかそうとしたレコン・キスタ……いや、今は神聖アルビオン共和国だったか。 …………私怨が全く含まれていない、と見る方に無理があった。 それに――――なるべく考えたくはないが、自分が行って、それでもなお負けたらどうするつもりなのだろうか? また父によれば、別に直接攻め込んでいく必要もないという。 「……戦争する意味って、何なのかしら」 難しいことはよく分からないが、そんなに無理をしてアルビオンと戦う必要もないのではないか、とルイズは思い始めた。 そして、まあ仮に……自分の『虚無』のおかげで、アルビオンとの戦いに勝ったとしよう。 勝った後は、どうするのだろう。 自分は元の学生に戻れる……訳はあるまい。 国と国との戦争のバランスを崩すほどの力を、一人の人間が持っているのだ。 良くて監視つきの毎日、普通に考えて飼い殺し、何かあったら戦場に投入、最悪の場合は実験動物のように扱われたっておかしくない。 ―――「彼らは愛と凶暴さを危ういバランスで両立させている種族だからな……」――― ―――「奴らは『正義』という大義名分を振りかざし、自分たちの都合を押し付けているだけだ!」――― ―――「人間共がお前たちをどんな目で見ていたか忘れたのか? 人外の力を持つお前たちを恐れ……時には敵視し、あまつさえ戦いの道具として利用する!」――― 夢の中の登場人物たちの言葉は、実に的を射ている。 案外『正義』よりも彼らのように『悪』と呼ばれていた者の方が、物事を的確に捉えているのかも知れない。 「……………」 自分の持つ力。アンリエッタへ抱いている思い。夢から得た視点。父の言葉。トリステイン貴族としての立場。未来予想図。この戦争だけではなく、今後も色々なものに与えるであろう影響。 ルイズはこれらの要素を考慮し、一日かけて悩み……。 「…………うん、決めた」 アンリエッタへと返答を行うべく、ペンを取るのだった。 トリステインの王宮では、アンリエッタが深夜だと言うのに執務室でせっせと仕事をしていた。 アルビオンとの戦争のための準備である。 五十隻にも渡る戦列艦の建造費、二万の傭兵、数十の諸侯に配る一万五千の武装費、またそれらとゲルマニアの同盟軍のための食料費など、諸々の資金の調達のために税率を大幅に引き上げる手続き。 少しでも兵力を集めるために、学生仕官や平民に対しての即席訓練の場を設ける。 戦争に反対する王宮内の人間や、各地の貴族たちへの少々強めの説得。 そして……王宮に潜んでいた獅子身中の虫のあぶり出しと、その排除。 とにかく、やることは山積みなのだ。 「ふぅ……」 一息ついて、首をコキコキと鳴らすアンリエッタ。 ……これらの仕事をこなすことは、肉体的にも精神的にも辛い。 だが、あの憎きアルビオンに巣食う者どもを根絶やしにするためだと思えば、どうにか耐えられた。 由緒あるアルビオン王家に攻め入り。 自分の愛するウェールズを殺し。 問答無用でタルブへと攻め込み。 更にウェールズに偽りの命を与えて意思を奪い、自分を誘拐したあの者たちを根絶やしにすると思えば……辛さもどうにか誤魔化すことが出来る。 「そうよ……。あいつらはアルビオンの……ハルケギニアの歴史を否定したわ。そしてウェールズ様を殺し、このトリステインを蹂躙しようとした……。……その報いは、受けさせなくては……」 ブツブツと呟きながら、アンリエッタは再び仕事へと向かう。 明日には、自分をアルビオンへと手引きしようとした高等法院のリッシュモンを罠に嵌める計画を実行しなくてはならない。 そのためにも、今日の内に片付けられる仕事は片づけておく必要があるのだ。 「……………」 そのまま一時間も経過した頃。 アンリエッタの執務室に、ルイズとの連絡用に使っていた伝書フクロウが飛んで来た。 「まあ!」 それを見て、アンリエッタの顔がパッと輝く。 アレが来たということは、ルイズがアルビオンの戦地へと赴く決心をしたということだ。 返事が遅いのが気になっていたが……きっと父であるラ・ヴァリエール公爵を説得するのに時間がかかったのだろう。 何せあの公爵は、この戦争に反対していると聞く。 「まったく、アルビオン打倒は今やトリステインの国是だと言うのに……」 あのような分からず屋で頭の固い貴族ばかりだから、トリステインの国力はどんどん弱くなってしまっているのである。 その点、娘であるルイズは違う。 数えるほどしかいない自分の理解者の一人。 小さい頃からのおともだち。 最近はどうも少し印象が異なっているような気がするが、それでもルイズならば一も二もなくこの戦に賛成し、自分のためにあの『虚無』を捧げてくれるはずだ。 「もしかしたら、公爵が説得出来なくて家から脱走したのかも知れないけど……」 アンリエッタの口から、自然と笑みがこぼれる。 意外と行動力のあるルイズのことだ、それくらいはありえるかも知れない。 トリステイン女王たる彼女は伝書フクロウがくわえていた書簡を取り出し、それを読み始めた。 まあ、読まなくても内容は分かっている。 アルビオンへ向かいますので、詳しい日取りを教えてください。お時間をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。わたしは現地で誰の命令に従えばよろしいのでしょうか。 こんな所だろう。 だがせっかくの親友からの手紙だ。じっくりと読むのも悪くはない。 そして手紙を開き、その内容に目を通して……。 「……………………え?」 そこに、書かれていてはいけない言葉を見つけた。 「は……? あれ、ちょっと、……ええ?」 その部分を指でなぞっても、手紙を振っても、目をこすっても、ディテクト・マジックをかけてみても、何度読み返しても……その内容は変わらない。 『わたしはアルビオンには行きません』 間違いなく、ルイズの筆跡でそう書いてある。 そんな馬鹿な。 『虚無』なくしてトリステインに勝利は有り得ない。 それはルイズも分かっているはずなのに。 「…………どういう、こと?」 慌ててその周辺の部分を読み返してみるが、『過ぎた力は使うべきではありません』だとか『そもそも積極的に攻め込むこと自体に疑問を感じます』だとか書いてあるだけ。 これではまるで、王宮内の戦争反対派たちの言い分ではないか。 しかも。 『幼少の頃よりの友人としての頼みです。どうか賢明なご判断をお願いいたします』 末尾にはそんなことが書いてある。 ふざけるな。 本当に友人だと思っているのならば、自分の頼みにはためらいなく頷き、従うべきではないのか。 事実、あのアルビオン行きを命じた夜はそうだったではないか。 「っ、ルイズ……!!」 彼女は自分のウェールズに対する想いを知っていたはずなのに。 自分があのアルビオンの者どもから受けた、非道な仕打ちを目の当たりにしたはずなのに。 それなのに、何故、自分を裏切るのだろう。 「……どうして……どうしてなの……!! どうして!!!」 グシャリとルイズの手紙を握り潰し、目に涙すら浮かべて叫ぶアンリエッタ。 ―――その激情と独りよがりな思考が今の結果を招く一因となってしまっていることに、彼女は気付いていなかった。 前ページ次ページラスボスだった使い魔
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前ページ次ページご立派な使い魔 ウェールズに連れられて、秘密港からニューカッスルへと侵入する。 砲撃に晒され、見るも痛々しい城は、その中も重い空気が流れていた。 それでも、一同を出迎えた老メイジは、ウェールズの戦果を聞いてたちまち感激で顔をほころばせた。 「硫黄とは! これで我々の名誉も守られるというものですな!」 「それだけではないぞ、パリー。見ろ、あの御姿を」 「なんと」 老メイジは、ほころんだ顔をたちまち引き締めた。 そして曲がりかけていた腰をしゃんと伸ばすと、一直線に立ち上がり、叫ぶ。 「男子の本懐、これに優るところなし! お見事でございます、殿下!」 気づけば他の者達も、そうやって敬礼している。 マーラが入城してきただけで、城が蘇ったかのようであった。 「窮地において、これ以上の激励はない。よく来てくれたものだ…… で、何の用事だったかな? ミス・ヴァリエール」 「……ですから、大使として……」 どうもおざなりになっているが、本来アンリエッタの依頼が目的なのだ。 というか、ルイズ以外の誰もがなんだかその辺をテキトーに流しているように見える。 ワルドもどうもあちらに集中してしまっているし。それは、頼もしくもあるからいいのだけど。 「そうだった。船の上でも聞いていたね」 「そうです」 「ではこちらへ来るといい。自室までご足労願おう」 流石に、アンリエッタからの手紙を読む時はウェールズも粛々とした顔になった。 遠い地よりの手紙に、思うところは大きいだろう。 「なるほど……アンリエッタは、私の可愛いあの人は……結婚するのか」 「殿下……」 しばし、ウェールズは天井を見上げ、目を閉じる。 ルイズも声がかけられず、思案していたが、ウェールズはすぐに戻った。 そしてある一点を見て、静かに語り始める。 「アンリエッタは、さぞや美しくなったのだろうね」 「はい、こちらに来る前にお会いしましたが……それは、もう」 「そうか。……出るところは出て、くびれるところはくびれているのだろうね」 「はい、それはもう……はい?」 どーもウェールズの目線がおかしいと思ったら。 ルイズの隣に向いている。つまりマーラを見て、でもって、色々、連想するのがアレという訳か。 ……まあ、まあ、この程度は、人間というのは生理的に、自然にそうなってしまうのだから仕方ない。 ルイズもぐっと我慢の子である。成長しているようだ。。 「いや失言だった。……了解した。あの手紙は私のナニよりも大切な宝だが、姫からの願いとあれば返さない訳にもいくまい」 すぐに元に戻った。これには安心である。 やはり、ウェールズくらいとなるとそう簡単には欲望には流されないのだ。 ギーシュみたいなのとは違う、とルイズは感心する。 「宝箱でね。……ほら、これだ」 何度も読み返されたらしく、すっかりボロボロになったその手紙を、ルイズは丁重に受け取った。 よほど大事にしていたのだろう、ボロボロでも、大事なところは綺麗なままだ。 この手紙の様子から、ルイズは薄々と感づく。 きっと、姫さまとウェールズ皇太子は…… 「……私はこの城を枕とするつもりだよ」 「え……?」 穏やかにルイズを見つめていたらしいウェールズは、先回りしてそんなことを言う。 「アンリエッタには、幸せになってほしいからね」 「殿下、それは……!」 「……しかし、ね」 ウェールズの表情がわずかに翳る。 どうしたのだろうと、ルイズが思う間もなく。 「……やっぱり綺麗なのだろうな、アンリエッタは。 一目見たかったというのは正直なところだ。そして……」 「で……殿下。でしたら……!」 「あ……ああ、いや……」 わりと見もふたもないことを言いかけたウェールズは、慌てて口をつぐむ。 そして苦笑いを浮かべると、困ったように続けた。 「どうもな。ラ・ヴァリエール嬢。君の使い魔どのは罪作りだな」 「は? マーラが?」 「この御姿を見ていると、ついつい……はは。いや。 ……男の誇りだとか、名誉だとか。そういうもののない、裸の言葉が出てしまうんだ」 「で、でしたら……!」 「……あくまで、これは裸の言葉だよ。裸で町を出歩く変人はいないように、この言葉も……出来れば、君の胸の沈めてほしい」 「そんな、殿下……!」 これ以上話を続けられては敵わないと、ウェールズは手を振って静止した。 そして時計を確認すると、咳払いして誤魔化してから告げる。 「さて、そろそろパーティの時間だ。 是非とも楽しんでいってほしい。それと……使い魔どのには是非とも中心となって頂きたい」 「任せておくがよいわな」 マーラは反り返って承諾する。 ルイズは、実に複雑な気分だった。 きっと今のウェールズの言葉は、決して表には出さないものだったはずなのに…… マーラのお陰で引き出した本音といっても、この後を思うとどうにも……切ない。 で、そんな感傷もパーティ会場で散々に打ち砕かれた。 「ご立派様、我らにご加護を!」 「何者をも貫く硬度を!」 「下から一気に喉まで貫くご立派を!」 パーティ会場にいた王党派の人間、尽くマーラに寄ってさすりまくっているのだ。 宗教儀式とも呼べるような勢いがあるが、どういうパーティだこれは。 「い、今までの雰囲気はどうなっちゃったのよ?」 「分からないのかい、ミス・ヴァリエール」 なのだが、ギーシュはどこか悲しい目で言ってきた。 「生の象徴に向かって、死の祝福を願っているのだ。 これほどに悲しい、しかし雄雄しい景色もないよ……」 「そ……そうなの。……そう、ね」 まあ彼らも必死なのだ。 強がって笑ったところで、迫り来る死を恐れぬものはいない。 だからこそ、マーラの如きあまりにも立派なモノに祈りを託し、せめて自分が最後まで立派でいられるようにと願う…… 切ない祈りであることは、ルイズにもどうにか理解はできた。 ただ絵面がいかにも悪い。 「もうちょっとシリアスにならないものかしら」 「先生の御姿あればこその光景さ。これ以上のシリアスはないね」 「……そうなのかもしれないけど……」 悲しい話なのに。 ルイズは今、生と死に潜む喜劇と悲劇、その全てを目の当たりにしている。 生命も死も、いつだって喜劇と悲劇は隣り合わせ。涙と笑いは背中合わせに存在する…… それが真理なのだというのだろうか。そんな真理が、あるのか。それが世の中だというのか。 「……わたし、今、少し大人になった気がする」 「ふっ……かもしれないね」 ギーシュは、何故か儚い微笑みでルイズを称えた。 一人、ワルドは空を見ていた。 使うべき手札は揃っている。後は勝負に出るだけだ。 既にウェールズにも、明日の話を打ち明けた。 彼らの生き様に感動したので、是非ルイズとの結婚式をあげさせてほしい、という。その願いだ。 本来ならばそれにはもっと色々な意味を用意するつもりだったのだが、今はそうではない。 「全てはあれに勝ってから、だな」 己の左手を確かめる。 昨日から摂り続けたたっぷりの栄養のお陰で、今にも爆発しそうなほど身体が熱い。 この熱さはきっと明日にピークを迎える。その時こそ、だ。 「ふん……随分と張り切ってるじゃない」 「……ああ。張り切るさ」 気づけば、隣にフードを被った女がいた。 「私にまで素顔をさらして……随分とまあ、気合を入れたものね? 白仮面さん?」 「はは……君に隠す余裕すらないんだよ、今の僕には。 君も一度、あれと戦ったのだろう? ならばこの緊張感は理解できるはずだ」 「私の場合は……あれは、まあ……あの決着はね……いや。 ……セ、セクハラしないでほしいわ!」 「セクハラ?」 見ると、女……フーケの顔が真っ赤に染まってる。 「これは珍しい。君がそんな顔を見せるとは」 「う、うるさいね……」 フーケは、やりづらそうに顔を背ける。 「しかしその調子で大丈夫かね。明日の決戦で、また同じ結末とならないとも限らない」 「それは……あんたが手を打ってくれるんだろう?」 「まあ、そうだ……」 ワルドの眼下には、旅を共にしてきたグリフォンがいる。 「振動が伝わらなければいいのだろう? なら、手はある」 「……だといいんだけどね。まったく……私にこの城に来させるなんて、正気じゃないよ……」 城自体にも思うところはあるらしく、それでフーケは黙ってしまった。 ワルドは、ただ空を見上げるだけだ。迫り来る決戦に向けて…… そして夜が明けた。 「さて、ではワルド子爵からの頼みだ。 ラ・ヴァリエール嬢と子爵の結婚式を、この私、ウェールズ・テューダーが勤めさせて頂きたい……と思うのだが…… なんだね、この状況は」 翌朝。礼拝堂に集ったのは、ウェールズ、ギーシュ、キュルケ、タバサ…… そしてワルドとルイズ。更にマーラであった。 マーラとワルドは、礼拝堂の中心で静かに視線を交錯させている。 「結婚式の前に決闘を行うのですよ。言っておりませんでしたかな、殿下」 「そういうことじゃわな」 「いや、聞いてないんだが……というか、決闘? 何故ラ・ヴァリエール嬢の使い魔と子爵が……え? 結婚するのはラ・ヴァリエール嬢と子爵なのだよな?」 混乱しているウェールズに、ギーシュがそっと近づき、耳打ちする。 「恐れながら殿下。この私、ギーシュ・ド・グラモンが説明致します」 「あ……ああ。どういうことだね」 ギーシュは、薔薇をかざしながら続けた。 「恐れながら、これはトリステインに伝わるメイジの結婚の儀式にございます。 夫となるべきモノは、自らこそが妻をもっとも守れるものであると示すべく、妻となるべきモノの使い魔に戦いを挑む。 そして妻の使い魔を打ち倒してこそ夫となる……このような伝統なのです」 「なんと……初耳だな」 「そうでしょう。私が今作りました」 「っておい!」 「殿方、手加減してあげてねー」 「……子爵が生き残れるかどうか」 キュルケとタバサは、例によって呑気なものだ。 わりと他人事だから、というのもあるのだろう。 「マーラどの。……思えば、こうなることは予想できていた。 ルイズとはずっと離れていたけれど……気にはしていたんだ。 そのルイズが、驚くべき使い魔を呼び出したと、そんな噂は聞いていたよ。 そして今……目の前にいる。なるべくしてなった、と思うべきなのだろうな」 「ふむ。小娘を気にかけておったのか?」 「ええ。僕は僕なりにルイズを愛していましたよ……」 静かに、杖を抜く。 「……そしてこの旅だ。 ルイズは、予想よりもずっと可愛らしく育ってくれていた。 しかもまったく理由はわからないのだが、予想よりもずっと…… 僕に、甘えてきてくれたのです。抱きついたりしがみついたりしてくれた…… この感動が、ご立派な貴方にご理解いただけるかは、わかりませんが」 「グワッハッハ! 理解できようとも! ワシは本来そのような存在なるがゆえに!」 「本来……?」 「他化自在天。我が名の一つなり」 「……恐れ入りました。他者の楽しみすら己の楽しみとするとは」 そして。 ワルドは、みなぎる力を杖に込めて、構える。 「では……我が全力を尽くしましょう。ユビキタス・デル・ヴィンデ……!」 呪文とともに、ワルドの姿が5つに増えた。 風の奥義、遍在の魔法である。 「例え五倍に増えようとも」 「そのご立派には及びませんが」 「しかし、我らは」 「硬度、持続力、発射回数において決してひけはとらない」 「……である以上……」 更に、本体らしきワルドが指を打ち鳴らす。 すると礼拝堂の外からグリフォンが入ってきた。 「な、なんだあれは?」 驚くウェールズ。更に驚くべきことには、グリフォンには誰か乗っているではないか。 フードで顔を隠しているが、どうやら女らしい。 というか。あの顔立ちにはどことなく、キュルケ、タバサ、ルイズには見覚えがあった。 「あれ……ひょっとして、よね?」 「…………」 キュルケとタバサが目を細めてそれを睨んでいる、と。 五人のワルドの前方に、突如として巨大なゴーレムが姿を現す。 「ほほう……」 マーラは感心しているようだが、これにはルイズも驚いた。 「え、ええ!? ちょ、ちょっと、ワルド!?」 「君のためだ! 勝つ為に僕は全力を尽くす! そう…… 全てを投げ打ってでも、だ!」 そのゴーレムのかたちには覚えがある。 「……ってフーケじゃないのよ! あれ!?」 まさしく、フーケのゴーレムだ。それは。 礼拝堂には固定化もかかっていたはずだが、それを打ち破ったというのだろうか。 ……というか。なんでフーケがそこにいる? 「うるさいね! こっちも仕事なんだよ! 誰が好き好んでこんな城に……!」 「どういうことよ……フーケは捕まったんじゃ……」 「脱獄?」 もう無茶苦茶な状況になってきたが、ワルドは声を張り上げた。 「僕はどんな手を使っても勝利する! 正々堂々たる決闘においても、だ! どんな手でも! 小細工ではなく! 全ての力で! 僕は貴方を倒す! ……ご覚悟を、マーラどの!」 「面白いわな! 来るがよいぞ……ワルド!」 最後の戦いが、始まる…… 「……私の可愛いアンリエッタ。今頃ナニをしてるかなー」 ウェールズはもう訳が分からないので、アンリエッタを思い出していたらしい。 前ページ次ページご立派な使い魔
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ここは魔法学院にある教室の内の一つ。 ルイズ達は、ここで『土』系統の魔法の講義を受けることになっている。 後ろの壁に様々な使い魔が並んでいる。サラマンダー、ネズミ、モグラ、ヘビ、ドラゴン… 召喚が終わってから初めての授業、本来なら使い魔の見せ合いでかなり騒がしくなるはず。 だが、教室はとても静かだった、ある種の異様な雰囲気に包まれている。 その原因は何故かルイズの傍らに居る使い魔。 「・・・・・・・・・・・・・・・」 ただ立っているだけなのに、周囲に奇妙な威圧感を撒き散らしている 教室の空気がやたらと重い。ルイズの周りの空気は更に重く、隣に居る生徒達は物凄く不幸だった。胃に穴が開くかもしれない 授業が早く終ることを殆どの生徒達が祈っていた それはルイズも例外では無い、が。 (お腹減った・・・・・・) 早く終わってくれ、と祈る理由は彼女だけ全く別。 寝坊した結果、朝食に間に合わなかった。故にルイズはお腹が空いていた 頭には昼食の事しか無く、ペットショップの威圧感など全く感じていない。ある意味大物である 生徒達が威圧感に苦しみ、ルイズが空きっ腹に苦しんでいる時 「ミス・ヴァリエール、あなたの使い魔ですが・・・・・・何と言うか・・・・・・外に出してもらえないでしょうか?」 空気を掻き乱す雑音が全く無い空間は、教師にとってある意味理想的である が、担当教師のミス・シュヴルーズは空気の重さに耐えられる程の神経を所有していなかった とうとう耐えかねて発言した途端、教室に妙な安心感が漂う。しかし。 ギロッ! ペットショップからガンを飛ばされた! シュヴルーズの細い神経は千切れる寸前になりかける 口から悲鳴が漏れかけるが、貴族としてのプライドを限界まで使用し何とか抑える。強い女性である。 言い知れぬ敗北感を感じながら、先程の言葉をスルーしてそのまま授業を続けようとする。 だが、彼女の不幸は更に続いた。 「え・・・は、はいミス・シュヴルーズ!な、何でしょうか!?」 テンパったルイズの声 昼食の事で頭がいっぱいいっぱいだった彼女は、シュヴルーズの声を全く聞いていなかったのである! そんなルイズの顔を苦虫を噛み潰したような目で見るシュヴルーズ。 彼女は『教室から使い魔と一緒に出て行ってください』と伝えたかった・・・・・・本当に伝えたかった! 「・・・・・・・・・・・・・・・・」 強烈な威圧感に続いて殺気まで放ってくるペットショップがそれを許さない 「え。えーっとミス・ヴァリエール、この石の『錬金』をやってもらいましょうか」 代わりに取り敢えず錬金をやらせようとしたが 彼女がそう口にした途端、教室の生徒の顔が恐怖に染まった。 生徒達はペットショップの威圧感を忘れてシュヴルーズに抗議する! 「先生、ルイズにやらせるのは止めてください!」 「爆発するんですよ、先生!」 「『ゼロのルイズ』に魔法を使わせるなんて『許可』しないで!」 だが、被害に遭ってない彼女は何で生徒達がそんなに怯えるか『理解不能ッ!』 それよりもペットショップが怖い彼女は、とっととルイズに錬金をやらせて授業を終わりにさせたかった。 「皆さん静かに!ミス・ヴァリエール、この石の『錬金』をやってごらんなさい!」 教壇へ向かっていくルイズとペットショップ。 それを見る生徒達は、何故に使い魔がルイズに着いて行くのか?と疑問に思った しかし今重要な事は疑問を解くより先に、一刻も早く自分の身を守る事!急いで机の下に避難したり、教室から脱出する! それを尻目に見ながらルイズは杖を掲げて、石の錬金を始めようとする。 彼女は失敗して爆発する事など毛の先ほども考えていなかった。 腹が減って思考力が減退していたのもあったが、サモン・サーヴァントを成功させたのが自信になっていたからである ペットショップの召喚により間違った自信が付いてしまったルイズ 万全を期して、石に自分の限界を超える勢いで魔力を込めて詠唱を始める そして――――――――巨大な爆発が起こった。 凄い爆発が起こった、石が、先生が、その他諸々が吹っ飛んじゃった 「・・・・・・・・・ちょっと失敗しちゃったようね」 あはは、と笑って済ませようとしたが、顔の引き攣りを止める事が出来ない。サモン・サーヴァント成功の自信が崩れそうだわ。 と、そこで私は気付いた 「あれ?」 至近距離で爆発が起きたのに、私無事だ。埃一つ付いてない 机の下に避難していたクラスメイトも黒い煙を吐いていたりして無傷じゃないのに。これってどういうこと? 疑問に思った私は周囲を注意深く見てみる、粉々になった石の欠片、気絶した先生、粉々になった――― 「これって氷?」 床に氷が散乱している、誰かが『水』の魔法でも使ったのかしら? ――――思い出した。今朝、滅茶苦茶に粉砕された廊下にも氷が落ちてたわね それにキュルケが、―廊下の窓や床もアンタの使い魔が滅茶苦茶に―とか何とか言ってたような。ムカツクからあまり思い出したくは無いけど 隣のペットショップを見る・・・・・・こいつも無事ね。となると、こいつが何かやったから私も無事なのかしら? 「この氷出したのってあんた?」 床に落ちている氷を杖で指しながら質問してみる私。だけどペットショップは何か考えてるみたいで私の質問に答えない。ご主人様を無視するとは良い度胸してるわね ・・・・・・・・・まあそんな事は別にいいや、爆発させた罰として教室の後片付けを命じられそうだし、今の内に箒と塵取りをペットショップに持って来させよ。 あぁ、それにしてもお腹減ったなぁ 私は女の言っている事を聞いていた。すると様々な事が分かった 驚くべき事にこの世界には『魔法』があると言う事だ スタンドとは違い、一つだけでも色々なことができるようだ。 マスターの部屋に侵入した二人の女は新手のスタンド使いかと思ったが、どうやら違うらしい。あの時あの二人が使ったのが『魔法』と言う事か (何で驚く?)(この世界?) ・・・・・・・・・・・・疑問が浮かぶのはこれで何回目だ?さすがにウンザリする。 考えても分からない事なので、無理矢理疑問を忘却して前を向く。 「え。えーっとミス・ヴァリエール、この石の『錬金』をやってもらいましょうか」 女が何かを言っている。『錬金』。あの石を金属に変えろと言う事か マスターが立ち上がって前に歩いていく、私もそれに続く。 「先生、ルイズにやらせるのは止めてください!」 「爆発するんですよ、先生!」 「『ゼロのルイズ』に魔法を使わせるなんて『許可』しないで!」 黙っていた奴等が何かを喚いている。『ゼロのルイズ』とは?何をそんなに慌ててるんだ? そして、マスターが杖を掲げて、何かを唱え始め――――私の本能が警鐘を鳴らした!『危険!』『危険!』『危険!』 理由を考えるより早く!本能が命ずるままにスタンドを使い、マスターと私を氷の盾で包む! ドグォォォォン! 一瞬後に爆発! 強烈な爆風が急造の氷の盾を粉々にするが、辛うじて私とマスターは無傷だ。 そして『理解』した。なるほど・・・・・・マスターが魔法を使うと爆発するから奴等はあんなに慌てていたのか。 奴等の言動から考えるに、マスターが爆発を起こすのは1度や2度の事では――――― (違う!)(マスターは!)(マスターの能力は!)(マスターの『スタンド』は!)(『世界』を―――) 「ペットショップ!!!あそこにある塵取りと箒持って来て!」 いきなりのマスターの声に意識が覚醒した。顔を上げるとマスターの怒ったような顔 もう少しで何かを思い出せそうな気がした、が。 自身の思考活動を優先するより先に、マスターの命令を優先させる事が重要だと判断 私は、マスターが杖で指し示す用具入れに向けて飛んで行った ・・・・・・この後、掃除の大部分をペットショップがやらされる事になったのは割と関係無い蛇足である
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前ページ次ページゼロと魔王 ゼロと魔王 第2話 ルイズは、目の前にいる自称魔王と名乗る人物、いや悪魔が怖かった。 当然だろう、力の差というものを教えられると、人間不安になり怖くなるものだ。 それに加え、相手は10メイル程の火球をいつでもはなてる状態で、こっちは何も打つ手がない状態だ。 これで怖くないという奴は、あきらかに頭のネジが数本抜けているだろう。 だが、自分の召喚した使い魔に恐れている自分を許せず、どうなっても抵抗しようと思った。 足が震え、怖くて仕方ない。 せめて何か言おうと思い、言葉を口に出した。 「あ、あんた!やめなさいよ!あんたは私の使い魔なんだから、私の言うこと聞きなさいよ!」 ああ、自分は何を言っているのだろう。 相手は悪魔だ、自分の使い魔でもあるが、相手が言う事を聞くはずが無い。 だから、相手の左手のルーンが光り輝いて、火球が四散した時には、何が起こったのかわからなかった。 「な!?」「え?」 それは、どうやら相手も予想外の出来事だったのだろう。 驚きを隠せないといった表情をしている。 「貴様!一体何をした!」 悪魔が言ってくるが、自分にも何が起こったのかわからないので答えようがない。 「チッ!とりあえず、この左手についておるこれを何とかするのが先か・・・・」 何をするのかと思っていると。 「何かの契約みたいだが、こんな物、オレ様の力で打ち消してやる!」 すると、悪魔の左手に魔力が集まっていく。 それも、膨大な量の魔力だ。 これだけの魔力を持っているメイジなどまずいないだろうと思っていると。 悪魔の左手のルーンが徐々にだが、消えていっている。 原理はよくわからないが、力技で契約を無効にしようとしているのだろう。 ルーンが消えていっている事に、ルイズは焦ってこう言っていた。 「やめなさい!」 すると、消えていっている左手のルーンが再び光輝き、集まっていた魔力が四散した。 「な・・・・」 ラハールは絶句し、左手の甲を見てみると、折角消えていっていたルーンが、またクッキリと浮かび上がっていった。 その光景を見て、ルイズはこう考えた。 (私の声に反応して光っている?もしかして、ある程度私のいう事を聞かせられる?・・・なら、試してみる価値はあるかも) するとルイズは、ある言葉を口にした。 「あなたの力を制限するわ!」 「何をアホな事を言って・・・ってうお!」 すると、左手の甲のルーンが光った。 それも、今だかつてない光を放って。 なぜ、私の言うことを聞けとではなく、力の制限と言ったのか。 簡単な事だ、始めに「あ、あんた!やめなさいよ!あんたは私の使い魔なんだから、私の言うこと聞きなさいよ!」と言った時、「私のいう事を聞きなさいよ!」という言葉に反応したのではなく。 おそらく、「やめなさいよ!」に反応したと思ったからだ。 悪魔がルーンを消そうとした時も、「やめなさい!」と言ったら、ルーンが光ったので、間違いない。 おそらく、本人に言う事を直接聞かせる事は出来ないのだろう。 だから、力の制限はどうだろうと思い、言ってみた。 どうやら、成功したみたいだが、失敗していた時の事は考えたくもない。 そして、光がおさまった。 「・・・」「・・・」「・・・」 今地面に立っている3名の間に変な沈黙が流れ、その沈黙を最初に破ったのは、悪魔だった。 「貴様!オレ様に何をした!事と次第によっては・・・・!?」 なにやら、驚いた顔をしたと思ったら、呪文の名前だろうか。 それを叫び始めた。 「『ギガファイア』!『メガファイア』!ギガどころか、メガ級の魔法まで使えんだと・・・」 だが、ポスッっと、虚しい音しかせず。 それ以外何も起きない。 「ならば!『ファイア』!」 すると、ようやく炎が出たが。 今までの、炎の魔法よりショボイ。 「クッ!異世界で使える魔法が初歩の初歩だけだと!ふざけるな!」 どうやら、さっき出した魔法は初歩の魔法らしい。 そんな事を考えていると、コルベールがルイズに話しかけてきた。 「ミス・ヴァリエール、どういう事かわかりませんが、皆が起きる前に、この悪魔をなんとかせねば!」 そうだ、悪魔なんて、そんなおとぎ話にしか出てこないと思っていた存在だが。 悪魔を召喚する事はタブーとされている。 悪魔を召喚した事がバレた場合、一体どのような事になるのかわかったものではない。 だが、ルイズはその悪魔を、使い魔として召喚して、使い魔にしてしまったのだ。 だったら、その事を隠さなければならない。 「ですが、どうすればいいんですか?」 「どうすると言われても・・・・事情を説明するなりして、悪魔である事を隠してもらうしか・・・・」 その場合ルイズは、平民を召喚したと言われるだろう。 だが、今はそんな事を言っている場合でもないので、コルベ―ルの案にしたがう他ない。 「わかりました。・・・・ねえ、ちょっとあんた」 「あぁ!?」 ものすごく怒っているみたいだが、こっちは、未来やその他もろもろが掛かっているため、気にする余裕なんてものは無い。 「あんた、悪魔だって事を隠してちょうだい」 「なぜオレ様がそn・・・・」 言いかけたと思ったら、いきなり黙り込んでしまった。 そして、こう答えた。 「・・・・いいだろう」 ものすごく嫌そうだったが、了承してもらえて一安心した。 ラハールが、なぜこのように答えたのかというと。 (異世界に迷い込んだと思ったら、変な契約を交わさせられた挙句の果てには、魔法や力の制限を受けている状態では何もできんではないか) どうやってラハールの力を制限したのか、わからないが。 魔法や力の制限を受けてしまった以上、少なくとも、自分が魔王である事は、隠した方がいいのは確かだろう。 (しかし、ここは一体どこなのだ?魔界という事は絶対に無いだろうし、天界でもない、ましてや人間界という事も絶対になさそうだな) ラハールがこう思うのは、魔界や天界なら人間がこんなにいるはずが無いし、人間界だとしても、人間界に魔力はほとんどない、それに比べて、ここは魔力があふれている。 (ならばここはどこだと言うのだ・・・) そうして、考えていると、ピンク髪の少女が話しかけてきた。 「そういえばあなた、名前は何て言うのよ?」 自分の力を制限したであろう、人物にラハールは、さっきまで足を震わしていたのは一体どこのどいつだったか、と皮肉の1つでも言ってやろうかと思ったが、やめた。 「・・・ラハール様だ」 「ふ~ん、ラハールっていうのね。これから私の使い魔として、よろしくね」 勝手にしたくせによく言う、と思わなくもなかったが、今の状態では、この世界で生きていく事は不可能だと思ったため、素直に言う事をある程度聞こうと思った。 「・・・よろしく頼む」 「そんな嫌そうに言わなくてもいいじゃない」 「誰のせいなのだろうな」 そんな会話をしていると、禿が横から話しかけてきた。 「話の最中失礼しますが、少し、あなたの左手のルーンをスケッチさせてもらっても構いませんか?」 「ん?これの事か?別に構わんぞ」 「それでは失礼して・・・ありがとうございます。他の物も、目覚めるようには見えませんし、あなた達はさきに、自分の部屋に戻っても構いませんよ。私は生徒たちを何とかしないといけませんから」 「はい、それではミスター・コルベール、お先に失礼します。行くわよラハール」 「オレ様に命令するな」 だが、付いて行くしか他に選択肢が無い為、言う事聞くしかないのだが。 そして、今までのゴタゴタを最初から最後まで空から見ていた者がいた。 それは、タバサという、トリステイン魔法学院の生徒だ。 ルイズが爆発を起こす、少し前に、その場を離れていたのだが様子がおかしかったので、召喚した竜に乗って、上から見ていたのだ。 「・・・」 どう思っているのかよくわからないが、あまりいい感情ではないだろう。 ただの危険事物として見ているだけかもしれないが、よくわからない。 シルフィードにいたっては、さっきまで怖がっていたが、ルイズが何かやったあたりから、落ち着いている。 寮の方に消えて行ったのを確認して、自分も寮に戻っていった。 寮に戻ると、ラハールからの質問に答えていた。 ここはどこなのか、とか、なぜ自分が召喚されたのか、など。 上げていてのではキリがない。 だが、ルイズも気になっていたことなどがあったので、ある程度こたえた所で逆に聞いてみた。 「そういえば、ラハールは炎の魔法を使ってたけど、あんたって炎のメイジなの?」 これはとても重要な事だ。 今まで、自分の系統がわからなかったが、これによって自分の系統がわかるかもしれないからだ。 「メイジというのは知らんが、オレ様は他に、ウィンド系の魔法と、クール系の魔法、あとスター系の魔法が使える。もっとも、どれも初歩の魔法しか使えんのだろうがな」 スター系というのはよくわからないが、炎の他にも、風、氷などが使えるらしい。 結局、自分の系統がわかりそうにないと思ったので、別の質問に変えた。 「あんたって、どれくらい強いの?いや、さっきのを見れば、相当強いっていうのぐらいはわかるけど・・・」 少し思い出して、怖くなったのはここだけの話である。 「あんなもの、全開の半分も出していないぞ」 「な!?」 それは絶句もするだろう、あの巨大な火球を出したのに、あれですら本気の半分も出していないというのだから当然である。 「そ、それなら本気を出したらどれくらいなのよ」 「そうだな・・・あそこに山が見えるであろう?あれぐらいなら簡単に消し去れるぞ」 そういうと、窓の外に見える一番大きな山を指さし、そう言った。 「少なくとも、人間風情がいくら群がろうとオレ様の敵ではないな」 それはそうだろう、ルイズは知らないが、数百年前に魔界に来た、200万の宇宙艦隊を1人で壊滅に追いやったのだ。 それも、1人の死者を出さずにである。 (私って、本気でやばい奴を召喚しちゃったかも・・・でも、要望通りに強い使い魔を手に入れれたのは事実よ。私の言う事を聞きそうにないから、おいそれと力の開放は出来そうにないけど・・・) 「そういえば、お前はどれくらい強いのだ?お前も貴族とやらなら、魔法なりなんなり使えるのであろう?」 ラハールがそのように聞いた時、ルイズは答えるかどうか迷った。 これを言えば、ラハールに馬鹿にされないだろうか? いやそもそも、ただでさえもいう事を聞きそうにないのに、これでもっと聞かなくなり、手を付けられなくたったらどうしようかとも思った。 だが、それではいけないと思い、覚悟を決めてこう言った。 「私は・・・魔法が使えないのよ。正確には、魔法を使っても爆発しか起きない。簡単に言えば落ちこぼれなのよ」 もっともルイズの場合、実践魔法を除いた座学ではほぼ学年トップの成績を収めているため、別に完全な落ちこぼれという訳ではないのだが。 「?たしか、使い魔の力=主人の力ではなかったのか?まあ、オレ様にビビっておったから半信半疑ではあったが・・・・」 そう言われて、次にラハールが何と言うか、怖くなったが。 一旦覚悟を決めたのだ。 何を言われても、我慢できる自信があった。 だが、次のラハールの言葉を聞いて、ルイズの心は我慢ができなくなった。 「ま、いいのではないか?お前はオレ様という、史上最凶の魔王を呼んだのだ。お前は誇っていいぞ・・・って、なぜ泣いておるのだ?」 「え?」 あまりの予想外の言葉に、泣いてしまったようだ。 今まで、誰かに認められた事などほとんどなく、ルイズの評価は大抵ろくでもないものばかりだ。 だが、それらの評価は本当の事なので、自分もその評価を何とかするために努力をしてきた。 それでも、現実とは非常なもので、ルイズの努力を嘲笑うかのように、魔法は失敗するばかり。 今回も、自分の実態を知り、ラハールは自分に何か言うのだろうと思っていたが。 まさか、自分を認めてくれるような言葉を言ってくれるとは思わなかった。 (何よ、そんな事を言われたらうれしいじゃない。本当に、嬉しすぎて涙が出るくらいにね。) だが、このままではラハールのペースに持っていかれると思ったし、何よりパッと見自分より年下の男の子に言われたため。 こう言ってみた。 「何よあんた、生意気よ」 「・・・何か勘違いしておるようだから、言っておいてやるが。オレ様はお前の数百倍は生きておるからな」 「えええええええええええええええええええええええ!?」 という、主人の驚きの声が寮に響いた。 ここは、トリステイン魔法学院の学院長室。 そこへ、すべての後片づけをすませたコルベールが、真剣な顔で入室した。 「オールド・オスマン、少しお話が」 「わかっておる、ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の事じゃろう?遠見の鏡で全部見ておったわ。おぬしがここに来るだろうと思って、ミス・ロングビルにも退出させてある」 「それではオールド・オスマン、あなたの意見を伺いたいのですが」 「ふむ、ヴァリエール嬢も随分と厄介なものを召喚したものよ。まさか、魔王を召喚するとは・・・」 「ええ、今はミス・ヴァリエールが力を封じていますが・・・おそらく、魔法だけでなく体術もかなりのもと予想できます」 「それは、「炎蛇」としての経験からかね?」 オスマンの言葉に、少し顔をしかめるが、すぐにこう答えた。 「ええ、それにまだ本気ではないところを見ると・・・」 「ヴァリエール嬢共々、戦争の道具として使われる可能性がある・・・かね?」 「はい、あれだけの強さですから。それに、あの魔王だけなら、戦争なんてものに手を貸すつもりはないでしょうが・・・・ミス・ヴァリエールがどうするかはわかりませんからね」 「・・・ふ~む、少なくともこれは、アカデミーや王宮の奴らに黙っておいた方がよかろう」 「そうでしょうね」 しばらく沈黙が続き、始めに声を出したのはオスマンであった。 「して、お主はあの魔王の左手の甲に現れた使い魔のルーン・・・・あれが何かわかるか?」 「いえ、それを含めてオールド・オスマンに伺うつもりだったので」 「あれはな、伝説のガンダールヴのルーンじゃ」 「な!?」 コルベールが驚くのも無理はないだろう。 ガンダールヴといえば、ハルケギニアでは神と並んで崇拝される伝説の偉人である、虚無の担い手の使い魔である。 それをルイズが召喚したとなれば、驚きもするだろう。 しかも、そのルーンが今付いているのは、あの圧倒的な力を持っていた魔王である。 元から強い者にそんなものが付いたとなれば、驚きを通り越して、もはや絶望物だ。 「まったく、ヴァリエール嬢も面倒な事を毎度毎度持ち込むが・・・・一気に2つもの面倒事を持ち込むとは」 「では、これも内密ということに?」 「それしかあるまい。それとじゃ、あの者はメイジという事にする。ただし、貴族ではないということにするのじゃぞ」 「何故ですか?」 「考えてもみろ、その辺の平民という事にしておいて、魔法を使ってみろ。確実に騒ぎになる。じゃが、メイジという事にしておけばある程度誤魔化せる。それに貴族という事にしたら、調べられたら一発じゃ」 「ですが、あの者の魔法は詠唱どころか、杖すらありませんぞ?エルフと勘違いをされでもしたら・・・・」 「その辺もなんとか誤魔化すしかあるまい」 「はぁ、では、その辺を話に行ってきます」 「ああ、頼・・・・いや待て、その者をここに呼んで事情を説明した方がいろいろよかろう。ただし、ヴァリエール嬢は連れてくるでないぞ」 「はぁ」 何故ルイズを連れて来てはいけないのかはわからないが、オスマンには、オスマンの考えがあると思ったので、一応そう反応したコルベールであった。 「それでは、連れてまいります」 「うむ、よろしく頼む」 そうして、コルベールは、ラハールを連れてくるために女子寮に向かっていった。 「う~む、これからどうなるのやら、ガンダールヴの召喚・・・・何か恐ろしい事の前触れで無ければ良いのじゃが・・・・」 オスマンは静かにそう言うと、自分の使い魔である、ネズミのモートソグニルが戻ってきている事に気が付いて、こう言った。 「して、今日のミス・ロングビルの下着の色はどうであった?」 この老人にシリアス展開をさせると、締めはこうなる事はお約束であった。 前ページ次ページゼロと魔王